木春菊  [偕老同穴] 112 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「チュンソク・・俺に内密にせねば
ならぬ程の事案なのか?」

「はあ・・・」

「水くさい!…俺の背を任せる事が
できるのは、お前だけと言うに
分からぬか」

ヨンは椅子より立ち上がり
チュンソクの肩に手を置き、俯き加減の
顔を覗き込む

「大、大護軍・・お止め下され
某はなにも隠してはおりませぬ故・・」

「お前がそこまで頑なに吐かぬ訳は
俺に内密にせよと王命か?」

チュンソクの肩が、ぴくんと僅かに上下
するのを、ヨンは目敏く見つける

「・・・素直な男よ」

そう呟くとヨンの片頬が上がる
不適な笑みを浮かべ、ヨンは言葉を繋ぐ

「それはならぬ!!チュンソク
よいな、そのような事は許されぬ」

「へっ?…某はなにも申しては
おりませぬが・・・」

「お前の顔に書いておる」

チュンソクの素っ頓狂な声を溢し
何故か、自身の顔を手で懸命に払う

『まったく…これでは王命に背くのも
間もなくか』

「兎に角、それはならぬ
俺の言える事はそれだけ故」

「ですから大護軍、某は何も話しては
おりませぬが…」



「大護軍、市井の服屋がお目通り願い
たいと門番から知らせが来てますが」

「分かった、すぐに行く・・
チュンソク命拾いしたようだな
続きは後に…暫し抜ける」

テマンが声を掛けると、ヨンは
チュンソクの肩に手を置き、にやりと
口の端を上げると私室を後にする

『はあ~危ない、しかし
「それはならぬ」とは…如何なる事を
差しておられるのか?……
いくら大護軍とて、人の胸の内は
読めぬ筈・・』

などと思い、チュンソクはヨンの後ろ姿
見つめ見送っていた

ヨンが大門に着くと…

「これはこれは大護軍様、お呼び立て
する形になり、誠に申し訳なく…
ご注文頂いておりましたチマチョゴリが
仕上がりましたので、急ぎ持参
致した次第でございます」

と、服屋の主が深々と頭を垂れていた

「間に合わぬやも知れぬと諦めて
おった故安堵致した、急がせて
済まなかった…」

そう言ってヨンは礼を述べると
荷を受け取り大事そうに抱え
昼餉を共に食すべく典医寺へテマンと
向かう事にした

「大護軍…それは医仙様の衣ですか」

「ああ、今日はほわいとでーであろう
故に、ウンスに返しをせぬばならぬ
テマン、お前は用意してはおらぬのか」

「いえ、してますが…あの・・」

「なんだ?お前まで俺に隠し事をして
おるのか」

ヨンは立ち止まり、テマンを
睨む真似をする

「隠し事など…でも俺と迂達赤と典医寺
と、その他の人は皆で一つの物を・・
あ~うまく言えないけど、兎に角
婚儀にまでには完成・・あ、いえ…
渡せる筈です…もう少し待って下さいと
大護軍からお伝え下さい」

「ん?完成とはなんなのだ」

「いえ、渡せる筈と・・先に行きます」

テマンはそう呟くと問い詰められまいと
逃げるように駆け出して行った

『まったく、皆して何を隠しておる』

そう思ったものの、ウンスの喜ぶ顔が
脳裏に浮かび、ヨンも大股でテマンの
後を追い、典医寺へと向かう



「ウンス…昼はまだであろう?
共に食わぬか」

「えぇ…これからだけど、ヨンも一緒に
お役目大丈夫なの?」

ウンスは嬉しいそうに、典医寺扉から
ひっこり顔を出したヨンに歩み寄る

「ああ、構わぬ、待っていろ
昼餉を運ばせる故」


武閣氏に、昼餉の支度を頼み
ヨンはすぐに戻り、ウンスの手を取り
ウンスの私室へと向かう

「ヨン、痛いって…」

「ああ、すまぬ…気がせいでおった故」

「そうなの珍しい事もあるのね、片方
の手に抱える荷はなんなの?」

「ウンス、部屋で話す故」

「うん!分かったわ…」

ヨンは気まずそうに後頭部を掻きながら
立ち止まり、ぽつりと呟くと
ゆっくりと、ウンスを労るように
歩を進める


「ウンス…今日はほわいとでーであろう
これを俺からの三倍返しなんだが
俺の見立て故気に要るかどうか・・・
不安ではあるが・・」

「え?ヨンが選んでくれたの
嬉しい・・・」

ウンスはそう言うと、口元を両手で隠し
瞳には涙を浮かべ微笑んでいる

「ちょっと待ってて、着替えてくるから
覗いちゃ駄目よ」

そう言って衝立の向こうへ向かうと
早速がさごそと衣が擦れる音と
時々 洟(はな)を啜る音がヨンの耳に届く


「・・お待たせ・・・」

衝立から瞳には涙を浮かべ、されど
満面の笑みを湛え姿を現したウンス

その衣は、チョゴリは薄いぴんく地に
桜の花が、両肩に刺繍され
チマ地は桜の花に邪魔にならぬ
ようにと白地で統一され
脇に一ヶ所だけ小菊が
控えめに刺繍されていた

「・・・よう似合っておる
泣いておったのか?」

「・・だって嬉しくて・・ありがとう
ヨン…忘れずにいてくれたのね」

「無論!前に話したであろう
俺も天界の行事に、共に触れると
故に覚えておる」

ヨンは、ウンスの元に歩み寄り
その胸にしっかり抱き、額に口づけを
一つ落とす

昼餉を運んできたヘジンとカンが
部屋に入れず、右往左往してはいたが
しまいには諦め、互いに顔を見合せ
苦笑いを浮かべていた…


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