サザエさん―シルバ(23)
オバアサンは、オシンコを作るのが得意です。
朝日文庫版33巻〔76頁〕・昭和41年
『頭の天辺で、髪を束ねた和服のオバアサンが、テレビも点けずに、首をうなだれ、淋しそうに座布団の上に座り、膝に上にネコを乗せて、時間を潰しています。そこへ、サザエさんが訪ねてきて、「オバアサンなんでもしてもらいたいことをいってください」と声をかけました。オバアサンは、返事もせず首をうなだれたままです』
『オバアサンは、ネコの頭を優しくなでながら、「わかっちゃないよ若いもんは」と言い続けて、「むしろさせてもらいたいんだこっちは」と大きくうな垂れて悔しそうに言いました』
『それを聞いた、サザエさんが、「じゃおいしいおしんこのつけかたを、習おうかしら」と言うと、オバアサンは、スクッと立ち上がり、目もパッチリと見開き、颯爽とタスキガケを始めました』
『オバアサンは、サザエさん家の調理場に、サザエさんと4人の近所の奥さん達を集め、調理台の上に、壺や、お味噌や塩などの調味料を置いて、マナイタの上に置いた大根を「いい?アサヅケとヌカミソのコツはここ!!」と言いながら、張りきって、得意そうに、オシンコのつけ方を教え始めました。サザエさんのお父さんが調理場に現れ、「敬老の日だぞ」と、サザエさんを叱りつけると、サザエさんは「シーッ」と怒った顔をしたお父さんを抑えています』
年老いて何もすることがなく、ネコと過ごす毎日に、オバアサンは退屈していたのでしょう。まだまだ、好きで得意なことは元気にできる。美味しいくオシンコをつけること位は、簡単にできる。
そんなオバアサンが猫と遊んで、暇つぶしをしているところに、サザエさんがオシンコのつけ方教えてくださいと言ったのは、これは幸い、
「あら!私若いころからオシンコをつけるおは得意よ!教えてあげるから近所の奥さんを誘っておいで」
ということになり、サザエさんは、漬物の材料、大根や調味料を買ってきて、近所の奥さんに、私の家で、○○さんのオバアサンがおいしいオシンコの作り方を教えてくれるそうだから、私の家にいらっしゃいと誘うと、4人も集まってくれました。
オバアサンは、張りきってしまい、うな垂れて淋しそうにしていたお年寄りではなく、生き生きとした先生になってしまいました。
大根の切り方にもコツがあるらしく「いい?アサヅケとヌカミソのコツはここ」と言いながら、大根を包丁で勢いよくトントントンとリズミカルに切りました。
オバアサンは、上手に切り、何処かの奥さんのように、不十分な切り方で、繋がっていません。
こんなに、オバサンが楽しく、オシンコの作り方を教えているところに、余計な者が現れました。
サザエさんのお父さんです。もう、お年寄りの仲間に近い歳に近くなってきているお父さんは、「今日が何の日」か、気になり、知っていたのです。
今日は、9月15日で「年寄りの日・敬老の日」です。お父さんは、この年寄りの日に、年老いたオバアサンが、サザエや近所の奥さんたちに使われ、大根を切ったり、容器に漬け込む力仕事をやらされているのを目撃したのです。
サザエさんに、ソーッと、「今日は敬老の日だぞ、お年寄りに仕事をさせるのはやめなさい」と注意したのです。
「違うのよ、お父さん!、シーッ、黙ってて!」