サザエさん―傘(15)
雨の中の人探しは、難しいものです。
朝日文庫版13巻〔77頁〕・昭和30年
『お父さんの退社時に、突然の雨でした。お父さんは、傘を持っていなかったので、濡れて帰ったのです。ソフト帽とコートから雨水を垂らして玄関に入ると、お母さんが、直ぐに玄関に現れ、「あらこどもがむかえにいったんですよ」と気の毒そうに言いました』
『サザエさんが、レインコートを着て、レインシューズを履き、お母さんが忙しそうに「はやくいってよんどいで」と言うのを背に、コウモリ傘を開いて、玄関を飛び出しました』
『雨水で濡れたレインコートを着たカツオ君が、畳んだコウモリ傘を小脇に挟んで、息せき切って玄関に立っています。玄関に出てきたお母さんが、「お姉さんにあわなかった?」と不審そうに聞くと、カツオ君は「いいや」と答えています』
『ガッカリとくたびれた様な顔をしたサザエさんが、玄関のあがりまちに腰かけて、雨水が流れ落ちるコウモリ傘を横に、前屈みになってレインシューズを脱いでいます。そこへ、カツオ君が、雨に濡れた頭をタオルで拭いながら現われると、「いまお母さんがよびにいったよ」と教えてくれました』
突然、雨が降り出した時、手違いがあると、忙しくなります。
お母さんが、この忙しさを仕切っているようですから、追ってみました。
1.お母さん:「カツオ、雨が降り出したわ!今日、お父さんは傘を持って行かなかったから、駅まで迎えに行って」
カツオ君:迎えに行きましたが、お父さんとは、往き交こともなく、駅にもいません。
「少し待ってみるか!」
お父さん:誰も迎えに来ていない。
「待っても誰も来ないだろう。濡れて走って帰るか!」
2.お父さんが、雨にぬれて帰ってきました。
お母さん:「お父さん濡れて走ったの?カツオが迎えにいったわよ!」
お父さん:「エエッ!カツオには逢わなかったぞ!何をしているのだろう」
3.お母さん:「サザエ!夕食の準備、一寸止めて、お父さんが、カツオに会えずに帰って来たの。カツオが駅で待っていると可哀そうだから、早く呼んで来て頂戴」
サザエさん:「あらそ~お、急いで行ってくるわ」
4.その頃、
駅にいたカツオ君:「おかしいな!もう大分長い時間待ったような気がするが、お父さん、まだ帰ってこない。何だか変だ。駅の売店を一寸見ていた時に、通り過ぎたのかな。そうだそうにきまった。もう帰ろう」
カツオ君に知らせに向かったサザエさん:「嫌な雨だわ!夕食の準備もまだ大分残っているわ。急がなくちゃ。あそこの八百屋さんに人参有るかしら、一寸だけ見てみよう。あら!ないわ」
5.家に帰り着いたカツオ君を出向会えたお母さん:「カツオ!駄目じゃないの!お父さんは濡れて帰って来たわよ」。
それを聞いたカツオ君:「何だって、帰っていたのか。マア!仕方ない」
カツオ君が、出て行ったサザエさんと合わなかったのか不審に思ったお母さん:「カツオ、お姉さんと合わなかった?お父さんはもう帰ってきたから、あんたを呼びに行ったのよ」。
お姉さんと合わなかったカツオ君:「いいや、合わなかったよ」
カツオ君と会えなかったサザエさんが心配になったお母さん;「カツオ!お姉ちゃんが、あんたを探しまわっていたら可哀そうだから、お母さんが、お姉さんを呼びに行ってくるわ!濡れた体は風邪を引かないようによく拭くのよ」
サザエさんを呼びに行く途中、サザエさんが覗きこんでいた八百屋さんに大根があるか、店に入って探したお母さん:「アラないわ!仕方ない駅まで急がなくっちゃ」
6.駅まで行って、カツオを探しても見つからないサザエさん:「どこにもいないわ。八百屋さんを、よそ見した時に往き違ったのかしら!もう帰っているに違いない。私も帰ろう」
7.サザエさんは、これで終わりと急いで家に帰りました。
濡れたレインシューズを脱いでいるとき、濡れた頭をタオルでふきふき現われたカツオ君:「お姉さん、お母さんが呼びに行ったよ」
これに驚いたサザエさん:「えっ!また呼びに行ったの!切りがないわ。もう私は、夕飯の支度をしないといけないから、もう行かないわ!カツオ!もう一度、お母さんを呼びに行って!確りと前を見て歩くのよ!よそ見したらだめよ!」
8.サザエさんは、呼びに来たお母さんと合えていなかったのでした。
9.可哀そうなカツオ君は、折角、濡れた頭を拭いたのに、また、雨の中をお母さんを呼びに出かけることになりました。
今度こそ、お母さんを捕まえるんだよ!!
この行き違いに傘は、何本必要だったでしょう??
2本あれば、いいようです。勿論、2人で1本の傘を使います。
サザエさんが持っている傘。
カツオ君とお母さんが持っていた傘。