サザエさんの面白い落ち(126)
ビルなどの工事現場の傍を通る時は、上から落ちて来る物に注意しましょう、落ちて来る物がメザシでもあっても失神するかもしれません。
朝日文庫版24巻〔4頁〕・昭和37年
『ビルの骨組みが出来上がり、その回りが板で囲われ、落下物を防護する棚板も取り付けられ、上に登る梯子が取り付けられています。ビルの骨組みを囲んだ板壁には〇〇建設と大きく書いてあります。その工事現場の横の狭くなった道路を、サザエさんのお父さんが、コートを着てカバンを下げ、バス停に向かって歩いています』
『丁度、工事現場の横を歩いていると、上から15cm位の棒状の物が、お父さんの頭の上に落ちてきました』
『お父さんは、失神して、伸び、警官に上体を抱えられています。警官は、お父さんの頭の上に落ちてきた棒状の物を手にしています。警官は、そのメザシを、大きな弁当箱を手に持って、梯子を伝って上から降りてきた、ヘルメットを被った若い作業員の方に差し出しています。それを見た若者は「だってメザシですよ」と呆れたように言っています』
『救急車がサイレンを鳴らして駆けつけました。若者は、何か不服そうに「それだのに目をまわしちゃってんだ」と呆れています。警官は「しかたがないともかく救急車ではこぼう」とウ~~~とサイレンを鳴らして行ってしまいました』
面白い、可笑しい話です。
ビル工事現場の横を歩いていた、サザエさんのお父さんの頭の上に物が落ちて来て、失神してしまいました。
落ちてきた物は、弁当のおかずのメザシでした。
この事件について、工事作業員の言い分を聞いてみました。
その若者は、工事中の建物の上の方で、昼食の弁当箱を開いていた作業員の若者です。
俺が、弁当箱の中のメザシをつかみ損なって落としてしまいました。
そうです。
落としたものは、15cmもないメザシです。
シマッタ!メザシを喰いそこなった、と下を見たら、通っていたオジサンのソフト帽の上に落ち、オジサンは、失神して、バッタリ倒れてしまいました。
「アレーメザシで失神した」
と、俺は驚いて、急いで下に降りて行きました。
失神して伸びているオジサンを見た誰かが、直ぐに119に連絡し、警官と救急車が駆けつけて来て、オジサンのまわりは大騒ぎでした。
警官は、俺に向かって、メザシを持って突き出し、
「これが落ちてきたんだぞ!君が落としたのか」
と尋ねてきました。
俺は言いました。
「お巡りさん、俺が落としたのは、確かにそのメザシです。メザシですよ、メザシが頭の上に落ちてきたくらいで失神しますか?」
オジサンは、周りで騒いでいるのに、失神したままで動かないのです。
俺は、メザシが頭の上に落ちた位で失神、目も覚まさないこのオジサンが、奇妙でおかしくて仕方ありませんでした。
俺は、このオジサンは、小心者ではないか?と思いました。
多分、この工事現場の横を通る時、いつも、上から危険な物が落ちてきたらどうしようと脅えていたのだろう。カナヅチでも頭の上に落ちてきたら、死ぬんじゃないだろうかなどと思っていたのではないかと思いました。
だから、上から落ちてきた物が、メザシであっても失神するほどのショックだったに違いないんだ。
このオジサンにショックを与えた恐怖心を治すには、病院に運ぶしかなかったので、救急車だ運んでもらったんだ。
メザシが頭の上に落ちてきたくらいで、失神する人もいることが判り、
それから、女房が、
「今日の弁当のおかずはメザシよ」
と言った日は、メザシを下に落とさないように、細心の注意をするようになりました。
メザシを落として頭に命中し、失神する人が他にいるかも知らないからと注意しています。