サザエさんの面白い落ち(119)
カツオ君は、サザエお姉さんの優しさに、大泣きしてしまいました。
朝日文庫版37巻〔80頁〕・昭和43年
『マスオさんとサザエさんとタラちゃんが、居間で寛いでいます。マスオさんが、頭の中に、のしいか、焼き鳥、やきそば、デンガクなどの夜店の食べ物を思い浮かべながら、「おマツリいこか?」とタバコをふかしながら問いかけました。すると、タラちゃんを抱っこしているサザエさんが焼きスルメを思い浮かべながら、「いこいこ!」と賛同しています』
『外出着に着替えた、タラちゃんを抱っこしたマスオさんとワカメちゃん、とサザエさんが、カツオ君がマツリに行こうとしています。カツオくんも連れて行こうと隣の部屋のフスマをガラッと開いて、サザエさんが見たものは、その部屋の真ん中に、カツオ君が大の字になって寝込んいる姿でした』
『カツオ君は、イビキをかいて熟睡中です。それを見たサザエさんは「あらユメみてわらってる」とマスオさんに言うと、マスオさんは「せっかくたのしいユメみてんだから、おこさないでやろうヨ」と言いました。ワカメちゃんも何も言いません』
『その後、眠りから覚めたカツオ君が、大きく口を開けて、「そんな思いやりひどいや~~~」と大粒の涙を流して泣き叫んでいます。傍で、お母さんが困ったような顔をして、どうすることもできず、見ているだけです』
カツオ君のサザエお姉さんは、大変優しいお姉さんです。
カツオ君もお祭りに連れて行こうとしたら、カツオ君は熟睡していました。
サザエさんは、ユメを見て幸せそうなカツオ君の顔を見て、ここで起こすのが忍びなかつたのでしょう。
優しい気持ちになり、起こして連れていかないことにしたようです。
サザエさんも、マスオさんも、その上、ワカメちゃんも、優しい人達でした。
カツオ君は、この優しさを、思いやりと間違えました。
思いやりだったら、そっと起こして
「カツオ!折角、楽しい夢を見ているようだけど。みんな祭にゆくけど、貴方は行かない」
と聞くでしょう。
しかし、サザエさんは、優しいのです。そんな面倒な思いやりはしなかった。
折角寝ているからそのままにしといてあげましょうと言う、大変な優しさでした。
カツオ君にとって、矢張り、楽しいユメの世界より、現実のマツリのほうが遥かに良かったのではないでしょうか。
かって、夜店で、食べたい食べ物を食い、あげくの果てに、翌日は学校に行けなかった。
カツオ君思い出すだろう。ある晩、友達と夜店に行って、カツオ君が、次から次と色んなものを食べるもんだから、友達に「もうよせよ!」と注意され、案の定、カツオ君がお腹を壊し、翌日学校を休んでしまい、笑われたことがあっただろう。
しかし、今日のサザエさん達の優しさに泣かされた、カツオ君の泣きっ面は、相当なものです。
口を顔半分になるほど開き、両目から溢れる涙は顔面から50センチほど離れたところまで飛んでいます。
カツオ君は、サザエさん達の優しさに、相当、泣かされてしまったようです。