新発明(1)
古い知人が話してくれた。
彼は、数日前、電鉄系のデパートの地下にあるスーパに行ったそうだ。
そのデパートを有する電鉄会社の電車は、東海道新せ続けている。
揺れない、乗り心地がいいと親しまれている。
彼は、そのデパートの上階にある大型電気店で、目的の小型電気製品を購入した後、地下一階のスーパに行った。年末で買い物客が多い。
果物も、魚介類も豊富に置いてある。
彼は魚を食べたかったので、鮮魚売り場に行った。
新鮮な各種の魚が並んだ陳列台の傍のコーナーで、宣伝販売員の娘さんが、何かを声高らかに宣伝し、現物をお客に渡し、試食さて、説明している。
好奇心の強い彼も、その場に近づいた。
『お客さん、とっても美味しいですよ、よかったら食べて見ませんか』
と発泡スチロールの小皿に食べ物を乗せ、小さなホークと一緒に、周りのお客さんに渡している。
そのコーナーに、頭を並べるように、集まっていたお客さん達は、小皿を受取ると、器用にホークを使って、小皿の上にある食べ物を食べている。
「ウン、美味しい!」
「アら、食べやすくて、おいいしいわね!」
とか言い、好評だ。
覗き込んでいた友人にも、小皿に乗った食べ物がやってきた。
友達は、差し出されて小皿を思わず受け取った。
ホークも貰うと、食べざるを得ない。
小皿を手にして、台の上に並べて置いてある食品を改めてよく見ると
『「目鉢マグロ」とのシールが貼ってある赤身のマグロの切り落とし』。
と
『「ぶっかけ目がぶ」とのシールが貼ってあるめかぶ』
が並べて置いてある。
ワサビ醤油の調味料も置いてある。
販売員の娘さんは、少し大きめの容器に、「めばちマグロの切り落とし」を取り、その上にマグロと同じくらいの量の「めかぶ」を加え、更に、ワサビ醤油を加え軽くかき混ぜている。
そして、混ぜ合わせたものを少しずつ、発泡スチロールの小皿に乗せて、お客に配り試食させている。
客に渡しながら
【マグロとめかぶを混ぜ、ワサビ醤油でおいしく食べられます。この美味しさは、初めて味あっていただく味です。特許ものです。特許が取れますよ】
と宣伝していたそうである。
知人も、受取り、ホークで挿し取ることに、少し戸惑いながら、口に入れた。
ツルリートロンとた口触りが、なんとはなしに、心地よく、上手いと感じた。
何時もの、マグロの刺身を醤油をかけて食べるのよ違った食感だった。
思わず『うまい』と言うと、お姉さんは、すかさず
「でしょう、マグロをこんなに美味しく食べる方法は、ありませんでしたから、特許ものです。特許が取れますよ」
と言ったそうだ。
知人は、確かに美味しかった。あれを、どうしたら特許のできるか教えてくれと言ってきた。
マグロは、余計なことはせず、さしみ醤油で食べるだけで美味しい食べ物だ。
君が食べた方法は、マグロを解体して生じるマグロの切り落としを効果的に売るために工夫された、
「マグロの切り落としの美味しい食べ方」
として特許申請の明細書を考えてみるよ、と逃げた。