サザエさん:カツオ君の怒り(3)
選挙にXマスカードを使ったら駄目です。
朝日文庫版、39巻〔3頁〕・昭和44年
『サザエさんのお父さんが、ハガキくらいの大きさのクリスマスカードを持っています。お父さんは、そのカードを右手に持って見ています。そのカードには、エンジェルとクリスマスツリーの画像があり、【メリーXマス いそのかつおさま ヤスダクミコ】と書いてあります。お父さんが、そのカードをみて、前に立っているカツオ君に「きみ!ガールフレンドからクリスマスカードだ」と冷やかしています。カツオ君の顔は真っ赤になりました』
『ワカメちゃんも現れ、「ガールフレンドからなんてめずらしいね」と冷やかしています。後ろで、お父さんは、ニコニコ笑っています。カツオ君は、お父さんから渡されたカードを右手に持ち、ちがうちがうと左手をひらひらさせ、赤面しています』
『つぎは、サザエお姉さんも出て来て、カツオ君の頭を指で突きながら、「いいからいいからベンカイするな」と冷やかしています。カツオ君は、あたまを押されてよろけながらカードを持ち、少し表情が変わってきました』
『遂にカツオ君の顔が変わりました。左右の眉毛と目ん玉を顔の中心に寄せ、頭のてっぺんから湯気を立てて怒っています。怒っています。手に持っていたガードをビリリと引き裂くと、「みんなこうほしゃの名ぐらいおぼえろよ」とか「おくるほうもあわててら」と訳のわからないことを言っています』
カツオ君に送られてきたXマスカードの送り主が、ヤスダクミコと女性の名前が書かれているだけで、カツオ君はみんなに冷やかされています。
カツオ君自身、お父さんに、「女の子からクリスマスカードが届いているぞ」と冷やかされ、本気になっていたんでしょう。
僕に女の子から!
みんなに冷やかされ、カードを送った女の子は誰だろうと、懸命に思いだそうとするが心当たりがない。
こんな名前の女の子は知らない。
誰だろうと、考えている内に、あっあの人だ。
最近、近所を走り回っている車から聞こえてくるあのおばさんだ!
ヤスダクミコをよろしく!と叫んでいた。
あの可愛くとも何ともないおばさんだ。
オバサンもおばさんだ。選挙運動のカードのあて名は正しく書いてくれ!
磯野カツオではなく、磯野ナミヘイだろう。
クリスマスカードなんか送って洒落たことするから、僕はえらい迷惑だ。
見てみろ、父さんも姉さんも、オバサンの名前なんか覚えていない。
そんなことでは、おばさんは落選だぞ。
初めは、僕ももてるんだとその気にさせて、よく考えてみたら候補者のオバサンじゃないか。
俺に恥をかかせて、みじめな思いをさせたオバサン、ちゃんとやってくれ!
本当に頭にきた!