サザエさん―面白い落ち(111)

 

エリートコースの競り合いを忘れるには、テレビを見ながら寝転ぶに限る。

 

朝日文庫版41巻〔74頁〕・昭和45年

『カツオ君は、友達と一緒に勉強しようと、友達の家に行きました。二人は、教科書とノートを小脇に挟み、鉛筆を持って、部屋に入りました。その部屋には、友達のお父さんが寝転んでテレビを見ていました。お父さんは、大きな鼻の、穴に指を差し込んでほじくりながら、ポケーとテレビを見ています。二人は、茫然とそのお父さんを見ていました』

『そのお父さんの様子を見た友達は、台所で、てんぷらを揚げているお母さんの傍に行くと、お父さんの方を指さして「ママ!パパのようになっちゃいけないのネ」と聞いています。すると、お母さんは、お父さんの方を振り返りました』

『すると、お母さんは平然として、「いいのいいのあれで」と笑顔で答えました。友達は、それを聞いて、キョトンとしています』

『お母さんは、出来上がったてんぷらを食卓に並べながら、「エリートコースで不正なことをするよりこのままがいいの」とすまして言っています。お父さんは、まんが本を横に放り出し、口をポカリと開け、鼻風船を膨らませて、大の字になって眠っています。横には[エリートコースの汚職]と大きな活字で書いた記事を載せた新聞紙が開かれたままです』

 

また、好ましくないお父さんが出てきました。

お父さんは、疲れているのでしょう。

エリートコースを、競い合って走っている大人の人が、不正なことをしているわけではありません。正々堂々と競い合っている筈です。

 しかし、お母さんの言うように、勝ち残るために不正なことをする人がいる、新聞が報じていたようです。

 

お母さんは、そんな記事を見て、不正をして、牢屋に入れられて、家にいなくなるより、例え、鼻くそをほじくりながらでも、テレビを見ているお父さんは、いる方が良いと思ったのでしょう。

 

しかし、お母さん、少し問題ですよ。

大の大人が、子供の前で、鼻をほじくるのは、みっともないものです、いいものではありません。

 

だからお母さん、そんなお父さんを「あれでいいのよ」なんて言わず、叱りましょう。

「お父さん、こどもの前で、はなくそをほじくるのだけは止めて」

 

お父さんは、なんと言うでしょうね?

「鼻をほじくりながらテレビを視ていると、リラックスするんだ。会社のことは忘れてしまう。もともと、エリートコースを走っているわけではないが、そんなことも忘れて、リラックスしすぎて眠くなる、眠れば疲れも取れる、疲れが取れれば、明日のエリートコースの競り合いで頑張れる。家にいる時は、テレビの前に横になり、鼻をほじくりながらテレビを見て、眠ってしまうのに限る。そうだよネ!ママさん」

などとは言わないと思います。

やっていけないことは、テレビの前で寝転ぶことではなく、会社で不正をやることです。

ママはそう思っています。

だから、

「あれでいいのよ。パパのようになっては、駄目よ!駄目駄目」

とはいいません。