サザエさん―判らない落ち(22)

 

新巻鮭は、お歳暮でお中元ではないようです。

 

朝日文庫版40巻〔132頁〕・昭和45年

『サザエさんが、チューブ入り糊を横に置いて、大きな箱を、化粧紙で折り目に注意しながら真剣な表情で、ソーツと慎重に包んでいます』

『サザエさんは、綺麗に包んだ箱をお母さんのところに持って行き、「よそにまわしてもわかんないわネ」と確かめています。お母さんは、紙包みをじーっと見て、「だいじょうぶ」と言っています』

『サザエさんは、大きな箱の紙包みを腕に乗せるようにして持ち、出かけました。バス停まで行き、バスを待っています』

『サザエさんが、バスが来るのを待っていると、スーツを着た、チョビ髭の紳士が、サザエさんの後に並びました。サザエさんが振り返って、その紳士をよーく見ると、紳士は、お中元と書いてあるのし紙を巻き付けた1匹の大きな新巻鮭をぶら下げています。それを見てサザエさんは、思わず「すごいのがいる!」と言ってしまいました。紳士は、サザエさんと視線が合わせないような素振りで、済まして立っています』

 

頂いた贈答品を、他所に回す、サザエさんの家で、この光景を時折見かけます。

サザエさんは、今日も頂き物が、重複したのか、あるいは、好みのものではなかったのか、送り主様には失礼し、他所に回すことにしたようです。

頂いたものですから、サザエさん家では少なくとも、一回は開いて中を見ていると思います。

それを他所に回すのですから、細心の注意をして包み直したようです。

サザエさんとお母さんは、包み直した紙包みを、「これで良し」と確か合い、サザエさんは、それを持って家を出ました。

 

サザエさんは、頂いたものを回すことに、恐らくかなりの良心の呵責があったものと思います。

 

サザエさんは、バス停で後ろに並んだ紳士が、新巻鮭をぶら下げているのを見て「すごいのがいる」と思わず言っています。

何故、物凄いのか、直ぐにわかりませんでした。

贈答用に、「新巻鮭は、藁紐で結んで熨斗を付けて持ち歩くの人」を、よく見かけたことがあります。

しかし、そんな姿を見て、何がものすごいのでしょう。

新巻鮭をぶら下げて歩くことなど「ものすごい」こととは思えません。

 

サザエさんは、何をものすごいと思ったのか、

ひょっとすると、背もあまり高くない、この紳士が、新巻鮭を持ち歩いて、新巻鮭の尾びれが擦り切れているのかなと思い、描かれた新巻鮭の尾びれを、虫めがねを持ち出して、詳細に見てみましたが、綺麗な尾びれです。

もの凄いとは思えません。

 

サザエさんの四コマを一コマ目から見直します。

1コマ目には、包み直している頂き物が、お歳暮なのか、お中元なのか判りません。

サザエさんが。バスを待っている時の服装は、ワンピースです。

だから、この時は夏です。

この時期の贈答品は、お中元です。

お中元だから、紳士が、お中元と書いたのし紙を貼り付けた新巻鮭をぶら下げていても、物凄いことはありません。

 

しかし、頭の回転が速いサザエさんは、紳士が、ぶら下げている新巻鮭を見て

「このオジサン、去年の暮れに頂いたお歳暮の新巻鮭を、お中元の熨斗をつけて回しているのだわ、半年も前の物を回すなんて物凄い

と驚いてしまったのでしょう。

 

新巻鮭は、お歳暮の贈答品で、お中元の贈答品でなければ、昨年の暮れに頂いた新巻鮭の「お歳暮ののしを、「お中元ののしに取り替えて、堂々とお中元として、持ち回している、この紳士は、確かに、「ものすごい」ようです。