サザエさん―面白い落ち(108)
一度は言ってみたい!でも言ってはならぬ一言もあるでしょう。
朝日文庫版37巻〔121頁〕・昭和43年
『髪を高く結い上げた和服にコートを羽織った奥様がデパートの和服売り場にいます。鏡の前で和服の反物を肩にかざし、見ています。奥様の後ろにデパートの女店員さんが奥様の様子を見ていました。その女店員さんが言いました。「にあうわけないだろうそのカオで!アホ」。それを聞いた奥様は顔を歪めて怒っています』
『映画館の中です。一人の男が、白いカバーをかけた、横に並んだ座席の一つに足を拡げて座っています。横の列の座席には誰も座っていません。そこへ、映画館の案内嬢が来て「白いカバーは指定席です」と言いました。すると、その男は、「あそばせてる土地は税金をとろうって時代だョネェちゃん」と言っています。白いカバーをかけた横一列の席の後には沢山の観客が、二人の成り行きを見ています』
『駅のホームです。発車する列車の中に、会社の偉い人が乗っており、ホームには沢山の人が見送りに来ています。ホームの皆さんは、両手を上げてバンザイと叫んでいます。
ご栄転万歳などと言っている中に、「バンザーイせいせいしたぞ!帰ってくるな」と大きく口を開いて、嬉しそうに叫んでいる男がいます』
『サザエさん家です。マスオさんが、サザエさんが手にしていた月給袋を、怖い顔をして強引に取りあげています。マスオさんは、「おれがかせいだカネだ一度ぐらい全部使わせろ!!」と叫んでいます。取られたサザエさんは、悲しそうな顔をして、ビックリしています』
一度は、言ってみたかったことだそうです。
こんなことを言ってみたら、さぞやスッキリするでしょうね!
ブスの奥様が、高価な反物を、これ見よがしと品定めしている。
そんな時、そんな人は絶対いないと思いますが、いや、いるかも痴れません。
そんないるかも知れない人が
「にあうわけないだろうそのカオで!アホ」。
と言ったそうです。
こんなことが言えたら、これまた、さぞやスッキリするでしょうね!
白いカバーをかけた特別の席だ、誰も座っていない、勿体ない。
座ってやれと座ったら、直ぐに来た。
何だって
「白いカバーは指定席です」
「誰も座っていないじゃないか」
言ってみたくなり、
「あそばせてる土地は税金をとろうって時代だョネェちゃん」。
「誰も座らない席なら取っとくな!」
煩い課長が転勤!駅まで見送ってやるが、
もう2度と帰ってくるんじゃないよ、万々歳だ!
これもまた、スッキリでしょう。
以上は、一度は、言ってみたいことでした。
でも、これは言っては駄目です。。
「おれがかせいだカネだ一度ぐらい全部使わせろ!!」
マスオさんが、サザエさんに向かって言いたくても言うことではありません。
スッキリするどころか、いつまでも悔いが残るでしょう。
言われたサザエさんが、とても悲しそうでした。
これは、絶対に、言ってはならないことです。
マスオさん!そんな悲しいことは言わず、偉くなりましょう。