サザエさん―面白い落ち(96)
迷惑な動物のものまね、マスオさん、柄杓で水をかけてやれ!
朝日文庫版19巻〔95頁〕・昭和32年
『マスオさんとサザエさんが並べた蒲団に寝ようとしているところです。外から、犬と猫が喧嘩をしている鳴き声がしてきました。「フ―ッ、ワンワンワン、ニャーゴ、ワン、ニャン、ゴロニャー」と激しく大きな鳴き声が聞こえてきます。二人とも、うつ伏せになって、鳴き声が聞こえてくる方に、耳をそばだてています』
『犬と猫の鳴き声は、絶え間なく聞こえてきます。耐えられなくなったマスオさんは、遂に蒲団から抜け出し、台所に行くと、激怒した顔をし、柄杓を持ち出すと、「えーうるさい!!」と言いながら、水道から水を入れています』
『マスオさんは、水を満タンにした柄杓を持って勝手口の引き戸を「ガラッ」と開きました。マスオさんが、そこに見たものは、塀に凭れかかって腰をおろしている、グデングデンの酔っ払いでした、マフラにコート、赤ら顔の男で、傍らには、お土産の箱を投げ出しています。その酔っ払いは、マスオさんを見ると、右手をフリフリしながら、「うまいもんでしょう!」と得意げです。マスオさんは、水の入った柄杓を持ったまま、怒った顔をして、唖然としています』
『酔っ払いは、マスオさんが持っていた柄杓を受取ると、水をグイグイと飲みながら、「きょうものまねでカネ三つならしたんでね一杯祝ったとこ」と上機嫌です。「ウイー!」と完全に酔っています。マスオさんは、呆れてその酔っ払いを見ています』
犬と猫が喧嘩している様子のモノマネ。
こんなものまねを得意にしている芸人がいました。
確か、先代の江戸家猫八と言ったと思います。
最近は、こんなものまね師を見なくなりました。
喉自慢にも、動物のものまねと言うジャンルがあったのですネ!
猫と犬のケンカのものまね。テレビで見たことがあります。確かに「フ―ッ、ワンワンワン、ニャーゴ、ワン、ニャン、ゴロニャー」とうるさいものまねでした。
寝ようとした時、こんなモノマネを家の前でやられたら煩くてしようがありません。
しかし、マスオさんとサザエさんは、本当の犬と猫のケンカとは思ったのです。
マスオさんは、寝ようとしたところに犬と猫のケンカに、煩い!水をかけてやれと、柄杓に水を入れて、勝手口に出てきたのですね。
そこに見たのは、グデングデンの酔っ払いが、一人で犬と猫のケンカのものまねをしていたのです。
マスオさんが、そんな酔っ払いに、柄杓の水をかけることができずにいると、酔っ払いは、マスオさんから柄杓を取り、グイグイと水を飲み、
「きょうものまねでカネ三つならしたんでね一杯祝ったとこ」
と、自らが犬と猫のケンカのものまねをしていたことを、弁解したのです。
「カネ三つならした」だけのことはあり、マスオさんが、本当の犬とネコのケンカと聞き間違うほど上手なモノマネでした。
マスオさんもお人よしですから、酔っ払いに、柄杓の水を掛けずに、渡しています。
寝入りばなを妨害された怒りで、水をぶっかればよかったのに、そんなことはしませんでした。
この後の展開は判りません。
今でしたら、119に電話した警察に引き取って貰うでしょう。