サザエさん―面白い落ち(95)

 

冷蔵庫の中でも、果物は傷みます。早めに食べてしまいましょう。傷んだ梨は、お客様には出せません。

 

朝日文庫版19巻〔11頁〕・昭和32年

『磯野家にお客さんが見えました。お母さんが台所に来て、サザエさんに言いました。「なにかおきゃくさまにおだしするものないの」。サザエさんは、水屋の引き戸をあけて、何かないかと探しています』

『サザエさんは、ナシを見つけ、「なしがひとつのこっていたわ!」とホッとした様子です。お母さんも「まぁよかった!」とホッとして、胸をなで降ろしています』

『サザエさんは、台所でナシの皮を剥いています。ナシは大分いたんでいるようで、皮をむきながら「アラだいぶいたんでいる」と困った顔をしています』

『サザエさんは、皮をむいたナシをお皿に乗せて、お盆に乗せ、お客さんとお話をしているお母さんのところへ持ってきました。お母さんは、襖の外までやって来て、サザエさんが持ってきた剥いたナシを見ています。サザエさんは、お客さんには見えない襖の手前で、お母さんに、剥いたナシを渡しています。サザエさんは、お母さんにお盆に乗せた剥いたナシを渡しながら「こんなになっちゃったの」と言っています。お母さんは、お盆の上に乗っている、殆ど芯だけになった剥いたナシを見て呆れかえっています』

 

こんな、皮を剥いて、殆ど芯だけのナシを、お客さんには、出せなでしょう。

確かに、そうなんです。

長く冷蔵庫に入れていたナシは、酷く痛んでしまいます。

 

冷蔵庫に、ラ・フランスという品種の西洋ナシが入っていました。

数日前から気が付いていたのですが、食べてしまおうと取り出し、皮をむこうとしたところ、熟していました。

梨の熟したものを手にするのは初めてでした。

同時に横に置いていた柿も熟しています。

柿の熟したものは、熟し柿と言って美味しいものです。

しかし、熟し梨と言うのは聞いたことがありません。

そんな熟したナシは、皮をむこうとしても、もはや皮を剥くことは不可能です。

 

サザエさんは、そんな熟した梨の皮を剥いたようです。

しかし、そんなナシは、実が熟し、その傷んで熟したところを除くと、芯だけしか残らないでしょう。

 

サザエさんは、そんな傷んだ部分を除いた芯だけのナシを、お客さんに「お出し」するのでしょうか?

芯だけになったナシを、お母さんのところに持って行きました。

 

サザエさんは、そんな恥ずかしいことはしなくても、お母さんに[何にもないよ]と正直に言えば、お母さんも、そんな熟してしまう程傷んだ梨をお客さんに出す筈はありません。

多分

「何か急いで買ってきて、その間お話しているから」

と言うでしょう。

サザエさん、こんな時、カツオ君を使うのです。

「カツオ、急いで、果物を買ってきて」

と命令すれば、梨でもリンゴでも、お好みの果物を買ってきてくれるでしょう。

カツオ君は、それくらのことは、ハイッ!と言って、やってくれる頼りになる男の子です。

 

お客様を、少し待たせても、新鮮な果物をお出しした方が、傷んで、皮を剥いたら芯だけしか残らない梨を急いでお出しするより、遥かに立派なおもてなしと思います。

 

果物は、冷蔵庫の中でも意外と早く痛みます。

早目に頂きましょう。