サザエさん―面白い落ち(86)

 

占いは、日常の身近な事柄に限る。

 

朝日文庫版41巻〔69頁〕・昭和45年

『街角に易者さんがいます。と書いた紙切れを机に貼り付け、大きな虫めがねを机の上に乗せ、筮竹(ぜいちく)持って客を待っています。易者のおじさんは、利休帽を被り、上唇に張りついたような細い髭をはやしています。そこへ、束ねた髪を上にあげ、膝が見える位のワンピースを着た、小太りのお譲さんが、やって来ました。易者のオジサンは、筮竹(ぜいちく)の束を手にし、拡げながら、「フーンあんたのけっこん運ねェ・・・」とニヤニヤしながら応対しています。お嬢さんは、恥ずかしそうに微笑んでいます

『お嬢さんが、帰って暫くすると、サザエさんのお父さんがやって来ました。お父さんは、易者のオジサンに「ミノベが勝つかねハタノかね」と尋ねています。妙なことを聞かれた易者のおじさんは、思わず、口をアングリとしています』

『サザエさんのお父さんが、帰って間もなく、白髪交じりの短髪を7/3に分けた、偉そうに見える恰幅の良い中年の紳士がやって来ました。紳士は、「だいじしんはかくじつなとこいつくるの」と尋ね、引き続き「それからナセル亡きあとの中近東どうなるの?」と、尋ねています。易者のおじさんは、困った顔をして口をあんぐりしています』

『易者のおじさんは、家に帰ると、奥さんが縫物をしている傍に不貞寝すると足を組み、眉毛を八の字にし、可哀そうな顔をして、「おれ、とうぶんやすむことにしたョ、ムズカシイもんだいがおおすぎるもン」と泣きごとを言っています』

 

今日、先日逢った易者のおじさんと、よく似た易者のおじさんが、街角にお店を出していました。

今日の易者のおじさんの前には、先ず、最初は、若いお嬢さんが、結婚運を占って下さい、とやって来ました。

おじさんは、どの様に占ったのか結果は判りませんが、客運に恵まれたと思ったら、ウハウハだったでしょう。

 

しかし、その後がいけません。次に、やってきたのが、サザエさんのお父さんです。

お父さんは、何を占ってもらうのでしょう!気になります。

お父さんは、占ってもらうような心配ごとを持っているのかなと思っていたら、

案の定、

「ミノベが勝つかねハタノかね」

と妙な占いをして貰っています。

いや、どうでもいいことを尋ねています。

こんなことは、占いではない、予測だ!、そんなことくらい、新聞や週刊誌でも見ていれば、自分で判断できるだろう、おじさんは、言いたいでしょう。

易者のおじさんには、占い師であって、予想屋さんではありません、そんなことは判りません。

 

このハゲ頭のオッサンが帰ったと思ったら、偉そうな紳士がやって来て、

「だいじしんはかくじつなとこいつくるの」

とか、

「ナセル亡きあとの中近東どうなるの?」

とか、占いでは判らないことを聞いてきました

 

おじさんは、そんなこと、判らない。

占いは、事実に基づかないことを、予測して喋っているのに、この人達は、重大な事柄を尋ねて来る。

そんなことは、専門家に聞いてくれ、専門家ではない俺には判らん

考えたこともない、都知事など誰でも良い、地震の予測や国際情勢など、考えたこともない。思っただけで頭が痛くなる。

 

そんなに諸々のことは、問われて、考えて見たら頭が痛くなった。

易者なんて商売は、複雑な社会情勢が落ち着くまで、暫くお休みだ。

 

奥さんも大変だ、休まれたら、内職の縫物も、もっと頑張らんと駄目だ!