サザエさん―面白い落ち(70)
敬語の使い方がおかしいのは、渾名のせい。
朝日文庫版32巻〔57頁〕・昭和43年
『鉄棒があり、飛び箱が置いてある小学校の校庭です。カツオ君が二人の女の子と話をしています。黒いワンピースを着た女の子が、両手を頭の後ろに回しリラックスして、「チンパンジーが召し上がっていたわよ」と言いました。カツオ君と、もう一人のセ―ラ服とスカートを着た女の子は、興味深そうに聞いています』
『そこへ、刈り上げの初老の、スーツを着た先生が近づいて来て、「これだ!!いまのコドモは敬語のつかいかたもしらん」と愚痴っています。子供達は、目を丸くして先生を見ているだけです』
『先生は、カツオ君達に「チンパンジーなら、くっていた、またはたべていたでいい!」と教えています」カツオ君達は、不審な顔をして「それでいいんですか?」と先生に確かめています』
『○○○○』
この『○○○○』の落ちは判りますか?
先生が言う通りですよね、普通、チンパンジーのお食事は、話し言葉で「食っていた」や「食べていた」と言い表す筈です。
それくらいカツオ君達は判っているはずなのに、「チンパンジーが召し上がっている」と言っているのですから、どうしたんでしょう。
カツオ君達、その頃の現代っ子が、言葉遣いが上品になっていたとは思いません。
「チンパンジーが召し上がっていた」
カツオ君の前で、女の子たちは気取っているのでしょうか?
こんな学校の校庭でも、何時でも、先生達は、生徒達を確りと見守っているのです。
この先生、女の子が、異様な敬語を使っているのに気付き、
「チンパンジーが食事しているくらいで、[召し上がる]はないだろう」と、
そして
「敬語の使い方が間違っている。ここでは敬語を使わなくていい、[食っていた、食べていた]でよろしい」
と教えたのです。
しかし、
「子供達は、ここでは敬語を使うべきで、使い方も間違いない」
と思っているのです。
その理由が、わかりました。
『○○○○』は、こう言うことだったのです。
『子供達のいる場所は、校長室が見えるところでした。校長室の窓は開かれ、中が、まる見えです。そこには、まるでチンパンジーのような顔をした校長先生が、昼食のザルそばを食べています。校庭にいる子供達は、その姿を、注意した先生に見て貰いながら、「チンパンジーって校長先生のアダナですけど」と言いました』
そうだったんです。子供達は、目上の人である校長先生が昼食を食事している様子を普通におしゃべりし合っていただけだったのです。
チンパンジーとつけた渾名が、校長先生だったので、敬語を使うことになったのです。
しかし、カツオ君達も酷いものです、校長先生の面相がチンパンジーに似ているからとはいえ、校長先生の渾名を「チンパンジー」にして、呼び合っているのですから酷いものです!
注意した先生は、渾名の付け方についてもカツオ君達を指導するべきでしょう。