サザエさん―犬(13)
犬は、賢い動物です。余りにも面白い犬ですから、再度の登場です。
朝日文庫版27巻〔73頁〕・昭和38年
『牛肉屋さんの店先に、耳の垂れた白い中型犬がいます。お肉を並べた陳列台の奥に、コック帽を被った、チョビ髭をはやし、お肉を食べすぎて太ってしまったような、肥満のお店のご主人がいます。ご主人は、右手に持った風呂敷包みを犬の方に差し出し、左手に福引券を持って、「ホラ、こちらふくびき券だよ」と言って渡しています』
『その犬は、風呂敷包みを首に下げて貰い、ガラガラふくびき抽選機が、置いてあり、係の女の人がいる抽選場の前にいます。犬に続いてサザエさんとオバサン達が並んでいます。口にふくびき券を咥えた白い犬の順番になりました。係の女の人が、犬が咥えているふくびき券の方に手を差しのべています。犬は、首を伸ばして渡しています。後ろに並んだサザエさんが「まあよくわかりますわね」と感心して言うと、更に後ろに並んでいるオバサンも、「りこうな犬ですのね」と感心しています』
『突然、係りの女の人が、犬が渡したふくびき券を見て「タンス大あたり!!」と大きな声で叫びました。犬は、ビックリしています』
『タンカーの上に、ながながと伸びた白い犬が乗せられ、係の女の人と係の男の人が、タンカーの前後を持って運んでいます。サザエさんとオバサンは、どちらも口をポカーンと開けて見送っています』
犬が、お肉屋さんでもらったふくびき券は、タンスの大当たりでした。
この犬は、確かに賢いですね。
抽選場にふくびき券を咥えて持参し、係の女の人に渡す。
女の人が、大当たりと叫ぶのを聞いて卒倒する。
この犬は、どんな奥方に躾けられたのでしょうか?
牛肉屋さんまで、袋を首にかけて、肉を買いに行く、これを反復訓練し、それが出来るようになっただけでも、よく訓練された賢い犬です。
ここまで教育された賢い犬は、人間界のことが理解できるのでしょう。
肉屋さんのご主人が、ふくびき券だよと渡してくれると判るのです。
『これを、抽選場に持って行けば、何かが当たっているかも知らないな!
「抽選場のオバサン、何か当たっているかな。調べてよ。」
オバサンが叫んでいるぞ!
「エツ!タンスが当たった。タンスって、おれの家の奥さんが、大事な着物を仕舞っているあの大きな箱だろう。あんなものを、俺が当てたんだ。ここは卒倒するしかないな。バタンと倒れてやれ。ほら、俺の後ろに並んでいたオバサン達がオレを尊敬したような顔をして見ているぞ!そらタンカーが来たぞ、俺は英雄だ。タンカーの上に乗せられて、何処かに運ばれ、人間たちが、物珍しそうに見るんだ。そして、近所の顔見知りのサザエさんと言うオバサンがいるから、我が家まで、このままタンカーに乗せられ、帰れるんだ。俺の奥さんは、オレを見た何と言うかな!可哀そうにとはいわないだろうな。タンスが当たったと聞いたら、多分、喜ぶだろうな!でかしたお前!お前が買ったお肉を御馳走してあげるよ。もういいから起きなさい、と言うことになるだろうな。」
そして、この犬は、自分の余りにもの賢さを恐れるのでした。
『奥様は、1度あることは2度あり,2度あることは3度あると、俺に何度も、買い物を言いつけるに違いない。俺は、そんな言買い物は好きではないんだ、俺は【買い物犬】にしつけられたんだ』
オレは、そん犬にはなりたくない。