サザエさん―押し売り(2)

 

この押し売りオジサンは、僕にいいことしてくれるぞ。

 

朝日文庫版25巻〔9頁〕・昭和37年

『サザエさんの家に押し売りが来ています。押し売りは、鳥打ち帽をかぶり、口の回りには、生えっぱなしの髭が伸びています。彼は、縁側に腰かけ、売り物を入れたバッグの蓋を、サザエさんの前に開き、「おらア けいむしょでてきたばかりなんだ!!」と、怖い形相で啖呵を切っています。サザエさんは、押し売りに凄まれて震えています』

 

『サザエさんは、買わざるを得なかったようで、財布から2枚の100円を出して、差し出された押し売りの手に、こわごわと渡しています』

 

『押し売りは、ドアをピシャっと締めると、ほくそ笑んで、出て行きました』

 

『庭を歩いていると、ニワトリ小屋から、カツオ君が「じゃオジサンぼくのきもちわかるでしょう!ここから出して!!」と叫びかけています。押し売りのオジサンは、ギョッとして振りかえつています』

 

刑期を終え出てきた、罪を償った人を、押し売りの人にしてはいけません。

刑務所に閉じ込められて、辛かった、淋しかった思いをしたでしょう。

しかしそれは、悪いことをしたからです。

それを償ったのですから、罪はありません。

しかし、けいむしょでてきたばかりなんだ は恐ろしい脅し文句になるんです。

 

カツオ君は、悪いことをしたんだな。

罰として鳥小屋に、入っていなさい とサザエさんに閉じ込められた。

お姉さんの刑は、何時も厳しいから、今日も長いこと出してくれないよ。

 

カツオ君聞こえるか?

なんだか、台所で、押し売りが、サザエお姉さんを、大きな声で怒鳴りつけているぞ。

そこまで聞こえてくるだろう。

おらけいむしょでてきたばかりなんだ」

だから、物を買えって と言ってるぞ、おかしなこと言ってるな。

 

カツオくんもオジサンのことを思い、

オジサンは、刑務所で長い間苦労して、出てきたばかりだから、爆発してるのかな?

 

どじ込められると、大変だよね、俺も良く判るよ!オジサン。

やさしいなカツオ君!

何、オジサンに同情するから、お姉さんに、押し売りが上手くいったら、この臭い鶏小屋の中に閉じ込められている僕を助けてよ。

 

オジサン、閉じ込められていた刑務所を出たんだから、お姉さんに押し売りのような悪いことしないで、僕に、いいことをしてよ。

僕を、この小屋から出してよ!オジサン。

罪滅ぼしになるぞ、きっと。

もう、オジサンは、罪はないんだ、頼むよ!オジサン。