ワカメちゃん(43)
朝日文庫版『サザエさん』(24) 昭和37年
『ワカメちゃんが、サザエお姉さんと一緒に近所を散歩していると、和服を着て、エプロンをした、太ったオバサンが、自分の家の前を掃除していました。挨拶をして、何かお話をした後、オバサンが、突然、大きな声で、上品に口元を押さえ「まあオホホホホ」と笑いました』
『オバサンは、中腰になってワカメちゃんに顔を近づけると、指で自分の顔を指して、「おばちゃんは、おひなさまみたいだって?」と笑顔で言っています。ワカメちゃんは、思わず、「うん」と答えました。お姉さんもニッコリ笑っています』
『オバちゃんは、家にもどって、大きなナシを持ってくるとワカメちゃんにわたし、「こうえいだわ!」とたいそう嬉しそうです。ワカメちゃんは、その大きなナシを両手で受取りました。サザエさんはよかったわねと言った笑顔をしています』
『ワカメちゃんは、何お言い出すか判りません。サザエお姉さんは、いそいでワカメちゃんを抱え込むと、その場を立ち去りました。案の定、お姉さんの胸の中にナシを持って抱え込まれたワカメちゃんは、「いっも、おなじおべべを着てる」と言っています。お姉さんは、慌てて、ワカメちゃんの口を、手でしつかりと押えています』
四駒漫画です。
ワカメちゃんは、思ったことは正直に言います。
この頃、ご婦人たちは、着物を着ていたのでしょう。
節句のお雛様も、着物を着ている。
毎年、同じ着物だ。
だから、何時も同じ着物を着ているオバサンを
「おひめさまみたい」
と褒めたんだよね。
オバサンは、それは、大変嬉しかったでしょう。
気になるほど太っている私を、お雛様みたいと言ってくれるんだから、この子は。
何を着ていても、褒められたことのない私を、この子は御姫様みたいと褒めてくれた。
着物を着た太ったオバサンは、それは、それは大変嬉しかったのでしょう。
その嬉しさは、大きな新高ナシに姿を変えました。
ワカメちゃん、お利口だね!それでいいと思うよ。
オバちゃんを、「何時も同じおべべを着ている」
と褒めるより、
「おひめさまみたい」
と褒める方が、ずっといいんだ。
でも
「何時も同じおべべを着ているから、おひめさまみたい」
という本当のことがオバサンに聞こえれば、
「そのナシ返せ!」
と、恐いぎょうそうで追いかけられるぞ!
ワカメちゃんが「何時も同じおべべを着ている」と言ったのを、オバサンに聞こえないようにしてくれたお姉さんに感謝しよう。