カツオ君!(5)
引っ越しには、縄や筵、その値段は、関心をお持ちの人達が沢山集まっていただいてから教えます。
朝日文庫版1巻、昭和21年
『磯野さん家の門の外に、沢山の枚数の筵が積まれています。お母さんが、「カツオ!筵の番しておいで」と頼んでいます。カツオ君は、「うん」と答えて、脇に本を挟み、丸椅子を抱えて門から出ていきました』
『カツオ君は、門の外に置いてある筵の傍に丸椅子を置くと、椅子に腰かけて本を読みながら筵の番をしていました。するとオバサンたちが3人ほど集まって来て、「マー、良く縄や筵がありましたわねー」と一人のオバサンが言いだすと、赤ん坊を背負ったオバサンも「お大変ですわねー」と一緒になって同情しています。カツオ君は「むしろは15円で、縄は70円です」と教えてやっています』
『暫くすると、3人のオジサンたちが筵の所に集まって来て、ソフト帽を被りコートを着たオジサンが「いくら?」、自転車を押しているオジサンが「高いだろうな」、そして、銭湯帰りらしい、着物を着て、肩にタオルを引っかけたオジサンが「しかしよくあったね」などと言っています。カツオ君は、「縄が70円、筵が15円です」と応じています』
『丸髷を結い、大きな肩掛けを引っかけた買い物帰りのオバサンが一人だけカツオ君の所にいます。「マ-良く・・・・・デモお高かったでしょう」と丸椅子に腰かけて本を読んでいるカツオ君に話しかけました。カツオ君は、本から眼も離さず「もっと大勢集まってから」と筵と縄の値段は言いませんでした』
サザエさんの4駒漫画です。
カツオ君のお父さんが東京勤務になり、磯野家は、東京に引っ越すことになったようです。
そのため、磯野家では、荷づくりに使う縄と筵を買い集めていました。
5人家族ともなれば、東京への転居は、大変なことであったようです。
戦後間もなくのこと、家具などの荷づくりに使う、縄や筵を買い集めることから、大変なことであった事がうかがわれます。
当時、筵や縄等も容易に手に入らなかったのでしょう。
手に入り難い物を、しかも大量に買い求め、これ見よがしにもの外に積みかせておけば、誰かが持って行くかもしれない。
それらの見張りを言いつけられたカツオ君は、本を読みながらの見張り番を引き受けましたが、容易に手に入らなかった縄や筵を積んでいれば、通りすがりの人達が集まって来て、羨ましそうにいろいろと質問をして来たのでしょう。
初めは、集まってくる人達の質問に、いちいち答えていたものの、遂に面倒になってしまった。
多分、カツオ君は、これでは、本もゆっくり読めもしないやと、大勢人達が集まってから、縄や筵の値段を教えてあげようと思いついたようです。
ということですが、戦後の時代、引越しするにも麦わらで作った筵や縄が使われていました。
しかし、これらも品不足だったらしく、容易に安く手に入らなかったのですね。
最近、引っ越し等は、筵や縄などは殆ど使わず、引っ越し専用につくられた、リサイクル使用可能な段ボールや、表面が緩衝加工されたビニールシートなどのエコ材料が使用され、専業社が素早く効率的に作業をしてしまいます。
昔は、家族が親戚や知人の応援を得て縄や筵を使って荷造り、引っ越し作業をしていました。
最近は、大規模マンションが建築されています。
そんな所に、藁から作った縄や筵で荷造り、引っ越しは、あり得ないことでしょう。
筵が折り畳んで積み重ねられ、その上に、縄の束が乗せられている画は、昔、良く似たものを見た光景でした。
関心を持つ人たちが、集まって来てから、縄や筵の値段を教えてやろうと、少しは悧巧なカツオ君でした。