昔話 (金太郎-46)

15人の天狗党の面々は、馬を馳せ、山道を下って行く。

数日前、数人の天狗党が秘かに探って突き止めた盗賊の隠れが家を攻める。

馬を馳せ攻めて来る天狗党の数に、虚を突かれた盗賊の一団は、慌てふためいている。

手向かうこともせず、いち早く馬に乗ると、一斉に逃げだした。

天狗党の面々は、盗賊達が立ち向かってくるならば、得意の剣で切り果たすことはたやすいことだと思っていた。

意に反して、盗賊は戦わずして逃げる策に出た。そして、その逃げ足の速さに天狗党は、どうすることもできず、逃げ遅れた数人の盗賊を切り倒しただけである。

やむを得ない、天狗赤丸は、仲間に

『これ以上、深追いするのは止め―い』

と命じた。

東の領国に、目立って立ち入ることは避けねばならない。

数日後、金時は、大殿に城に参上するよう命じられた。

側臣と天狗党の主だった面々を引き連れて、大殿の前に参上した。

大殿の前には、この国の大勢の重臣達も集まっている。

ここで、大殿は、金時に対して、

「過日、そなたが申しておった隣国の盗賊の件、どのようになった」

と問われた。

金時は、大殿に、天狗赤丸から聞いていた成り行きを申し上げた。

「申しわけございません。我が天狗党は、盗賊の在り処を突きとめましたが、彼らを打ち取ることは出来ませんでした。隣国の中を深く追いつめること葉避けるべきなので、已む無く、盗賊を取り逃がしてしまいました」

大殿は

「なるほどそうであったか、それで良い。既に、申していたように、我が国は、総力を挙げて東の国を攻めることを決めた。落ち着かぬ不穏な国が隣にあっては、この先のことが気がかりだ。その上、身どもには3人の男の子もおる。この国は総領に譲るとして、次男、3男に然るべき領国を与えたい。そのために、東の国を我がものにし、その領国を統治させ、安定な国にしたい。

幸い東の国に通じる我が領地には、優れる家臣の金時がいる。金時!貴殿の力を中心に、総力を挙げて東の国に攻め入る。この件、時が至るまで隣国に悟られぬようにぐれぐれも留意するよう頼んだぞ。」

と重大な決心を明らかにされた。

「細かなことは、改めて主だった者に参集して貰い、細かに取り決める。しかるに、金時!これ以上隣国に盗賊を追う必要はないぞ」

と大殿は念を押された。

城に帰った金時は、側臣達と天狗党の面々に

「我が大殿が、東の国を攻められる決心された。しかるに、隣国に攻め入って、はびこる盗賊を滅ぼすことは止めるよう仰せられた。したがって、それまで、我が国に侵入してくるかも知れぬ盗賊達に対する警護を厳重にしよう」

金時は続けて、

「さて、隣国に攻め入る日はそう遠くないであろう。この戦では、我が領地は重要な位置を占めることになる。皆の者も、その心づもりで、戦に備え、十分な働きをなすよう、しかと頼んだぞ!」

暫く、熊王丸の成長を楽しみに平穏な日々を過ごしていた金時は、大殿が秘かに計画していたらしい戦に加担することになった。

(続く)