昔話 (金太郎-44)

その後、金時の紋所を描いた幟を背にした、屈強な若者たちが、金時が預かる地に馬を馳せる。

警護は一段と厳しくなり、金時の地では何事も起きなかった。

しかし、ある日が沈むにはまだ間がある夕刻に、東の国から金時の地に通じるが街道の、国境で、商人らしい男達が、褌一つの裸で駈けて来る。

彼等は、そのままの姿で、街の中に駈けこんできた。

街の者は、彼らを取り囲み、何ごとならん、如何したのかと問うた。

彼らの中の体の大きい、未だ、息切れしていない男が答えた。

「この街道の先で、突然、盗賊に襲われた。持っていた商いの物はすべて奪われ、その上、褌一つを残し、着ている物も全て取りあげられた。幸い、命までは取るとは言わなかったが、俺たちは命からがら走って逃げてきた。水をくれ!」

その街を取り仕切っているらしい者が、お前達、こちらに参られよと、その男の家に連れて行かれた。

「お前達が襲われた様子を詳しく聞かねばならぬ、領主さまに伝えるので暫くこの家にとどまれ」

この出来事は、金時城にもたらされ、天狗党の若者達にも伝わった。

彼等天狗党の面々は、馬を走らせて、彼らの前に駈けつける。

天狗赤丸が

「お主らが襲われた時の様子を詳しく聞かせてくれ。」

先ほどの男が言う。

「われわれ3名は、行商の途中で知り合い、世間話や面白い話を語り合いながら、街道を下っておりました。街についたら居酒屋で酒でも飲み合い、宿を探そうと楽しく歩いておりました。ところが、森に囲まれた山道が、街道と合流するところに来た時、突然、数人の盗賊が馬に乗って現れ、我らを取り囲み、抜刀して、荷を置け、着ている物を脱げ、金を寄こせと迫られ、そうすれば、命は取らぬと申すものですから、命には代えられませぬ、私達は荷物、金、着物等を投げ捨て、褌一つになって逃げてまいりました。」

「それは、どの辺りであったか判りやすく、この紙に画いてくれぬか?」

と言われて、一人が紙と筆を受け取ると上手に街道と山道を画いた。

「この辺りでございます。」

と画いた絵の山道を指でなぞりながら説明している。

「山道が登る山は、この国の金時城をいただく山と連なっています、恐らく山と山を繋ぐ山道がある筈です。この山道を行けば、盗賊が現れた街道に行けるでしょう」

天狗赤丸は、

「よく判った。」

と頷いた。

街を仕切る者に、

「この人達に着る物を与え、適切な量の金子も与え、故郷に帰してくれ、後で殿から、そなた見合う分を遣わすように致す」

と言うと他の天狗党の若者と共に帰って行った。

金時城の大広間、金時の面前に、側近の家来と天狗党の面々が揃っている。

(続く)