床屋

床屋で眠ってしまったらしい。

随分髪が伸びて、浮浪者のような長髪になり久しぶりに床屋へ行く。

この床屋は、チェイン店が沢山ある散髪屋さんらしく、理容師さんのメンバは、チェイン店を周期的か、どうかは判らぬが、変わっている。

今日は、優しい静かなおばさま理容師さんだった。

小さいな静かな声で必要最小限の口しかきかない。

腕は、確からしい。安心して任せられる。

髪を洗うときにも優しくタッチし、サービスの肩たたきも優しいソフトである。

男性理容師の、まるで、道路工事用のハンマーのように、もろ手を叩き下ろしくる、洗髪後のサービスの肩たたきにも耐えなくて済む。

その後、椅子に寝かされて、髭そりになると、ついに眠ってしまつた。

寝かされて、シャンプーをつけられる。

余りの優しさに、頭の片隅で、からかってやろうかと、いたずら心が湧いていたのだろうか?床屋さんの椅子の上で、素早い妙な夢を見てしまった。

・・・・

瞼を閉じていると髭そりの刃が顔の上を滑っている。

ところが、おばさま理容師さんが

「ギャーツ」

と叫び声をあげた。

その瞬間、わたくしも

「ギャ-ッ」

と言わざるを得なかった。

シートの上で起き上がり鏡を見ると顎の辺りに赤い血が出ている。

おばさま理容師さんが、

「この方、眠っているとばかり思っていたら、目をまん丸く見開いて、私の方をにやにやしながら見つめているんだもの、驚いてしまった。余りにビックリして、商売柄滅多にないミスをしてしまった。お客さんすみません」

と言いながら手当をしている。

・・・・

と顔の上のタオルが動き、目を覚ました。

椅子が起こされ、鏡を見つめたが、顔には異常がなく、おばさま理容師さんは、

「髪に何かおつけになりますか」

と優しく尋ねてきている。

ああ!夢を見ていたんだと気を取り戻し、

「ヘアーリキッドをお願いします」

変な夢を見た、のどかな散髪でした。