「四駒漫画(162):列車の光景-(56)

カツオ君は、優しく、冷静。


文庫26(昭和38年頃)

『電車の中です。座席は満杯のようです。大人の男達に挟まれて、カツオ君が真ん中に座っています。カツオ君は学校帰りで、ランドセルを背負い、そのランドセルには、50センチ位の目盛りが付いている物指しが差しこんであります』


『スーツを着た、大変太ったご婦人が、乗って来て、座れずに、カツオ君の斜め前に吊革を持って立っています。カツオ君は、スクッと立ち上がると、ご婦人を見ています。席を譲ろうと思ったのでしょう。しかし、ハタと何かを思ったようです』


『ランドセルに差し込んでいた物指しを取り出して、自分が座っていた席の幅を測っています。「27センチか」と困った顔をしています』


『申し訳なさそうな、しかし、ホッとした顔をすると、「やはり無理ですね」と言いながら、物指しをランドセルに元通りに差しこみ、また座っていた席に座りました』



サザエさんの四駒漫画です。

こんな優しい小学生は、偶にはいますよ。

前に立ったりすると、スクッと立つて、「どうぞ」と言います。

「いいよ、有難う」と言いますが、子供が座っていた席の幅は、狭く、普通の大人のお尻は、収まりません。

カツオ君もこんな優しい子でした。

カツオ君が座っている斜め前に、吊革を持って、太ったご婦人が大儀そうに立っています。

それを見つけると、席を譲ってあげようと立ち上がったのです。

しかし、「どうぞ」と言う前に、この席に、このオバサンのお尻が入るかなと思い、たまたま持っていた物差しで席の幅を測った。

27センチだったのです。

オバサンのお尻の幅は、目測です。

オバサンのお尻に物差しを当てるわけにはいきません。

目測では、27センチを超えている。

これでは、測った席の幅27センチの席には収まらない、無理だと判断し、また座ってしまいました。

カツオ君は「どうぞ」と言わなかった。

その冷静な判断が良かった。

もし、カツオ君が、どうぞと言ってしまつて、オバサンが、坊や有難うと、その席に割りこんで座ったら、カツオ君の両側に座っていた大人の男性達は、席を詰めてやらねばならず、窮屈な思いをさせられ、迷惑だったでしょう。

カツオ君の冷静さで、そんなことも起きませんでした。

カツオ君は、優しく冷静な子でした。

カツオ君は、おばさん、大丈夫だよ、席は、直ぐ空くよ、と言っているような表情をしています。