昔話 (金太郎-30)
金時は、殿に報告した。
「殿、助はいらぬと言うことでございました」
「そうか、ならば、放っておこう」
と殿も、深く立ち入らぬ様子である。
しかし、隣の領国の殿の頼りなさは、金時が見た通りであった。
この国を駆け回っている盗賊の親分は、虎蔵と言う強い奴で、眉毛が太く釣り上がっている、その上、顎が張り、まるで将棋の角の駒のような顔をしている。
子分が20人ぐらいおり、何れも向こう見ずで、情け知らずである。
この盗賊の群れは、この国の村や庄屋を襲って荒らし回っていた。村人を困らせていた。
この国の殿は、荒らし回る盗賊を討伐するため、武士を集めた。
選抜された武士達は、それぞれ武術に優れた者達であった。
しかし、盗賊の群れは、その棲家がどこにあるか判らない。神出鬼没で、見つけ出して攻めることが出来ず、攻められるだけである。
討伐隊は、盗賊を捕えることも、負かすことが出来ない。
盗賊の親分虎蔵は、乗馬も巧みで、馬を乗り回し、長刀を振りまわして、討伐隊に切り込んでくる。
武士達は、その勢いに恐れをなし、立ち向かう者がいない。武士の方が、這う這うの態で逃げ回る。
逃げ戻った討伐隊の武士達を前にし、殿は困り果ててしまった。
ある日、金時の山城に、隣国の使者がやってきた。
使者は
「我が殿が申されるには、[最近、盗賊が勢いを増し、その被害が、我が村々に大きな害を及ぼしている。討伐隊で立ち向かっているが、討伐するのが、なかなか容易ではない。ついては、御国の御知恵と御力を借りたい]とのことでございます」
金時は
「よく判りました。殿にお伝えし、御返事致します」
と返した。
殿に伝えると
「直ぐに、討伐隊を隣国に送っても良いが、盗賊の棲家が判らなければ、討伐のしようもなかろう。金時、良き知恵を絞れ、絞り出した知恵次第では、隣国に力を貸す必要もないのではないか?」
と任されてしまった。
山々に囲まれた田んぼや畑の間に、街道が通り、そこに米俵を積んだ荷車が3台連なって牛に引かれて進んでいる。その後の米俵以外の荷を積んだに車も連なっている。荷車の後先には、十数人の百姓らしき姿の若者が付いている。その後にも、荷物を背にした十数頭の馬も連なっている。
この集団が指揮者を先頭に立て進んでいる。
指揮者は直ぐに気づいた。街道のかなり前方から、土煙を上げて、騎馬が走ってくる。更に近づいて来ると、先頭の馬上には、長刀を持ち上げて振りまわしている盗賊とすぐ分かる男、が乗っている。
集団の指揮者は、百姓らしき若者達に、後の方についていた馬の荷を下ろすことを命じる。若者たちが、馬の背から、荷物を下ろすと、そこには鞍が付けられていた。
指揮者は
「者ども、馬に騎乗しろ」
と若者たちは、バラバラと馬に乗った。
指揮者は、荷車に乗せられた米俵の一つを槍でついた。
米粒が少しずつ落ち始めた。
盗賊達が、親分に続き近づいて来る。
指揮者は
「皆の者、荷を置いて、退散する」
と命じる。
それぞれ荷を下ろした馬に跨ると、一目散に今来た道を引き返して行った。
盗賊達は、深追いはしなかったが、放置された荷車や、散らばった荷を荷車に積み上げて、意気揚々と引き上げる。
二人の旅人が、旅籠を背にのんびりと歩いて行く、二人は時々、路に座りこんで、何やら話し合っている。
随分、のんびりした旅人で、ブラブラと歩く、時々言い争っているようにも見えるが、次第に、やま道に入ってしまつた。
道の並木のかげに家が見える。
旅人の一人が、地面を指さし
「ここに、米粒が続いている。この先に家が見えるぞ」
「そうだな、米粒はあの方向に続いている。これまでの道は覚えているか?書いておけ」
金時の前に、旅人を装っていた二人の若者がいる。
「金時様、盗賊達の隠れ処を突きとめることが出来ました、その場所は、この巻紙に書いたとおりです」
「御苦労であった。こうなれば、盗賊を討伐することは容易に出来るであろう。案を練る、その案を殿と隣の国の殿に謀って、盗賊の討伐を取り進める。お主たちも、よろしく頼む」
と労った。
(続く)