昔話 (金太郎-17)
一行は、殿の屋敷に帰りついた。
殿は、直ぐに大将と金太郎を呼びつけると、
「金太郎、今日からお主はこの屋敷の中で暮らせ、良く文武に鍛錬するのだぞ」
と金太郎に、
次いで、大将に
「既に準備してくれている通り、金太郎は、屋敷内の道場近くの住いに、他の若者と住まわせ、それぞれの学問・武道の師範につけて厳しく鍛えるよう申しつける。」
大将は
「ははっ!かしこまりました」
大将は、部下の一人に
「手筈通り、後は貴殿に任せる。道場に案内してやれ」
と命令した。
部下は
「馬番!金太郎殿の馬を休ませ、手入れしておいてくれ」
と何処からともなく、数人の馬番が、スーッと駈け寄ると、部下と金太の馬の手綱を引いて連れ去った。
「金太郎殿、さあ参ろう。身どもについて参れ」
と金太郎を屋敷の中を道場へと案内した。
屋敷の中庭や通路は、整然と石煉瓦に囲まれ、小石が敷き詰められている。
金太は、嘗て見たこともない素晴らしいものだと思えた。
大きな建物があり、その傍に広い弓道場、土俵まで設えてある。
建物の1階は道場であり、道場の鴨居には、槍や長刀が掛けられ、壁際には木刀が並べて置いてある。2階は住いになっている。
案内した部下は
「この道場の二階が住まいになっておる。今、この道場には、貴殿の外、既に3名の若者が暮らしている。仲良く過ごすようにとのことである。今、道場には居らぬようだ。暫くここで待っておれ」
何処かへ立ち去り暫くすると、暫くして、それぞれ年齢も身の丈も違う3人の若者を連れてきた。
「金太郎殿、共にこの道場で暮らすことになる若者だ。それぞれ○○○○、◇◇◇◇、◎◎◎◎殿である。以後、仲良く致すように」
と引き合わせた。
順に
「以後お見知り置き下さい。よろしくお願いします」
と挨拶している。
その後、学問、武芸の師範とも引きあわされる。
これから毎日を鍛えられることになる。
金太は、力自慢で相撲は強かった。しかし、枯れ木を戯れに振りまわしていたことはあるが、剣を持った事はなく、槍も持った事はない。まして、弓と矢を使い、作法に厳しい弓道は全くやったことはなかった。
だから、土俵で若者が集まり、相撲を取っても、金太にかなうものは誰一人としてなかった。負けず嫌いの力自慢の者が、繰り返し挑戦しても投げ飛ばされて、金太に勝つことはなかった。
しかし、道場で、剣道の師範に木刀を持たされ、金太に比べ身の丈も小さい若者に立ち会いを命じられると、数合も立ち合わない間に打ち取られた。
何回やっても、剣道では、身の丈の小さい若者達にガンガンやられる。
師範は、笑い
「何たることじゃ、剣に慣れよ」
と木刀の素振りから厳しくやらされる。
金太は、負けず嫌いだ。激しく長時間素振りをやる。
手の平に血が滲み、それでも止めない。数日の後、手の平が厚く固くなった。
金太は、剣道とはこんなことをする事かと意外だった。
しかし、そのうち、師範の指導する面、胴、突きなど木刀のさばきは、金太には、木刀が、箸でも持っているかのように軽く、身の動きも軽々と踊っているように出来るようになった。
(続き)