昔話-7(カチカチ山‐4)
タヌキの背中の火傷の痛みも治まりました。
タヌキは、何もすることもなく過ごしています。
時折、お爺さんが畑に出て畑仕事をしているところに現れ、お爺さんを侮るようなことを言っては、お爺さんに追い払われています。
お爺さんは、友達の兎にまた相談しました。
「あのタヌキは、火傷も治ったみたいだ。近頃、俺の所に時々現れ、俺をからかって喜んでいる。腹が立つので、徹底的な仕返しをしたい。良い知恵はないものかね」
と言い、兎も、
「あのタヌキ、しっこい奴ですね!徹底的にやりますか、私も知恵を絞ります。暫く時間をください」
とお爺さんに知恵を貸すことにしました。
数日後、兎がお爺さんを訪ねてきました。
「お爺さん、良い方法を思いつきましたよ。堤で漁をするための船を作ってください。その船は、何時も使っている船より大き目で、泥で作って下さい」
お爺さんは、近所の村人の手を借りて、山から粘土を掘りだして、堤まで運び、その岸辺で、その粘土を水草と練り合わせ船を拵えました。
それを日乾しにして泥船を作りました。
頃を見計らって、兎がお爺さんの所に行くと、お爺さんは
「泥船は、もう、そろそろ、出来上がるぞ、もう使えるよ」
と言いました。
兎は
「それでは、明日、2組の投げ網を持って、堤の岸辺に来て下さい。私がタヌキを呼び出して、泥船を使って、魚取りをしますので、私と一緒に木で作った船の乗ってください」
とお爺さんに頼みました。
翌日、兎は、タヌキのいる山に登り、
「おーいタヌキさん、堤に魚を取りに行こうよ」
と誘いに来ました。
食いしん坊のタヌキは
「うん、そうだね、今日は、日よりも良いし、たまには魚でも取って食べるかとするか」
と誘いに乗りました。
堤に来たタヌキと兎の目の前に、それぞれ投げ網が乗せてある木の船と泥船が並んで止めてありました。
「タヌキさん、あんたの好きな船に乗ってください」
と言うと、慾張りのタヌキは、二つの船を見くらべ、獲物の魚を沢山乗せられる、大きいほうの泥船を選びました。
そこへお爺さんが現れ、
「お前たちは何をするんだ」
と聞きました
兎は、投げ網を指さして
「見ての通り、堤に船を浮かべ、投げ網で魚を取りに行くんです」
お爺さんは
「そうか、俺も連れて行ってくれ」
といってタヌキが乗っている泥船の方に行きかけましたが、タヌキはすぐさま、
「いやだ、おれの船には乗せないぞ、爺さんは兎の一緒にその船に乗れ」
と乗せてくれません。
お爺さんは、兎と一緒の木船に乗りました。
2艘の船は、櫓を漕いで岸辺から離れ、タヌキは投げ網を投げました。
引っ張り上げる網の中には、鯉、鮒、鯰、その上ドジョウまで、沢山の魚が入っていました。
タヌキは、満足げに何度も何度も網を投げています。
船の中は直ぐに捕えた魚達で一杯になりました。
お爺さんと兎は、適当に網を投げ、適当に魚を捕えました。
魚を積んだ泥船は、粘土が水で緩み、その上ドジョウが緩んだ粘土の中に入り込み、泥船に水がしみ込んできました。
穴が開き、その穴はどんどん大きくなり、船の中が水浸し、獲った魚も、その水の中で泳いでいます。
とうとう、泥船は、水の中に沈み始めました。
タヌキは
「助けてくれ、溺れる」
と叫びました。
泥船は、ついに沈んでしまいました。
タヌキは、水の中でアップアップしています。
この時とばかり、お爺さんは、タヌキの方に船を寄せ、櫓を振り上げると、タヌキめがけて振り下ろしました。
「このタヌキやろう、婆さんのかたきだ、思い知れと」
何度も何度もタヌキを叩きました。
ぐったりとしたタヌキを船に引き揚げ、縄でガッチリと縛りあげました。
兎とお爺さんが、縛ったタヌキを家に持ち帰り、今度は、直ぐに料理してしまいました。
大きな鍋でタヌキ汁を作りました。
そのタヌキ汁を近所の村人に振舞いました。
臭くあまり美味しくはありませんでしたが、お婆さんがの作っていた味噌で、美味しい匂いと味がついて、皆、美味しい美味しいと言いながら、お酒の肴にして食べてしまいました。
このタヌキに、少なからず嫌な思いをさせられていた村人たちは、お婆さんの仇を討ち、供養出来たと喜んでくれました。
兎は、何時の間にか森に帰っていました。
これで終わりです。怖ろしいタヌキ野郎でしたが、お爺さんは、見事に、お婆さんの仇打ちが出来ました。それにしても、この話に出て来る兎は何者でしょう。正義の化身?
(カチカチ山 終)