切り餅(2)

越後製菓と佐藤食品工業の特許出願についてみてみる。

略同時期の出願で有るので、特許出願に関わる発明に関して、両社がお互いに知って、発明と出願を競い合っていたとは思えない。

切り餅(1)で触れたように、「手欠き切り餅」と題する個人の発明が、特願平8-359309(出願日:平成8年12月11日、公開日:平成10年(1998年)6月23日;特開平10-165121)として出願されている。その発明は、平たい餅片の横方向と縦方向に片面または両面から所定の深さまで切り込みを入れられた切り餅である。

この発明の目的である課題は、餅を老人や子供が喉をつまらせないような大きさに切る際、刃物で切ると怪我をする危険があるので、刃物でなく手で割れるようにした切り餅である。

単純な発想と構成の発明である。

この出願は、審査請求されていないので、特許権はない。

しかし、この出願は、餅の上面と底面に切り込みを入れた餅と言う発想を公知にしてしまった。

その後、佐藤食品工業と越後製菓の切り餅についての出願が続く。

先ず、最初は佐藤食品工業である。

「切餅及び丸餅」と題して、切餅の上下面から切り込みを入れた切餅を、特願2002-261947(出願日:平成14年9月6日、公開日:平成16年(2004年)4月2日;特開2004-97063)として出願している。

これは1個ずつ袋に入れた切り込みの入った餅で、平たい餅に上下面からの切り込みが、深さを限定して入れられている。

その効果は、流通時に割れる恐れはなく、焼いた時この切り込みがあるため、餅の中の蒸気が切り込みから抜け出し、焼いた後の形状が良いと言うものである。

売られている切餅を焼いて食べれれば、形状はどうでもいいと思うのだが、生産者は商売のため、そこまでこだわるのであろう。

佐藤食品工業は、この出願を早期審査請求し、審査されているが、拒絶されている。

その拒絶の理由は、上記した個人の出願が同じような発明があるので、あるいは、この公にされた発明から、餅を作る業者であれば、容易に思いつく程度の発明である、だから特許に出来ないと拒絶されたのであろう。

補正して、意見を提出しているが、特許に出来ないと決定されている。

佐藤食品工業は、この発明をその決定で終わらせている。

すなわち、この発明の切餅の特許権は存在しない。


この発明の出願日から1カ月ほど遅れて、越後製菓は、「餅」と題する特願2002-318601(出願日:平成14年10月31日、公開日:平成16年(2004年)5月27日;特開2004-1475968)として、出願している。

この切り餅では、わかりやすく言えば、厚みのある平板状の切餅の上面や底面に切り込みを入れるのではなく、側面をぐるりと回るように周囲の表面に、連なる1または複数の切り込みを入れた餅である。

その効果は焼いた時の吹き出しが、切り込みの周辺で生じ、切れ目を割るように膨れ上がるので焼き上がりの姿が良いと言うものである。


越後製菓は、この出願を権利化するまで相当の努力をしている。

拒絶され、意見書・補正書などを提出し、それでも拒絶査定となり、不服審判を請求し、異議申立てを各社から受けたり、その特許成立までの経過を見ても大変なものである。また、原特許からの分割出願もしている。

その甲斐あって、越後製菓の特許出願:特願2002-318601は特許第4111382号(平成20年4月18日)として特許権を取得している。


越後製菓は、この特許が、競合する切餅のメーカ佐藤食品工業に侵害されていると訴えたのである。


佐藤食品工業の出願を更に見てみたい。