『朝、マスオさんが出勤する前です。サザエさんは、お部屋のお掃除です。卓袱台を起こして部屋を広くしています。サザエさんは、箒とはたきを小脇に抱え、新聞を立ち読みしています。「あなたクツが7割値上げするんだって!」と目を丸くして言っています。隣の部屋でマスオさんは着物を通勤着の洋服に着替えています。』
『コートを着たマスオさんは、コートのポケットに右手を入れ、カバンを抱え、左手で帽子を持ち上げ「少し無理してでも買っとくかな」、サザエさんは部屋の廊下の際で、中腰に座り左手を突いて、右手を振りながら「あたしのも見てきてね」と、マスオさんを送り出しています』
『マスオさんは、カバンを小脇にはさみ、コートのポケットに手を突っ込んで、首をコートの襟に竦め街を歩いています。その道には、タバコの新製品を籠に入れ「如何でございますか」と呼びかける、美人のキャンペンガールが何人も並んでいます。』
『マスオさんが部屋に立っています。サザエさんは、マスオさんのコートを受け取り、片づけをしようとして、コートのポケットのあちこちからタバコが幾つも出て来るのにびっくりしています。9個を取り出しても、まだ他のポケットにタバコがあります。マスオさんは「タバコの値段が上がりそうだからね」と言い訳をしています』
サザエさんの四駒漫画です。
この漫画では、終戦後のインフレで色んなものが値上がりしたことを教えてくれます。
クツの値段が7割上がるとは大きいです。
余計なことですが、資料によると、「昭和20年8月の敗戦以降、食料不足や外地からの多数の引上げ者等により小売物価は4ヵ月後には2倍に、6ヶ月には約3倍となったと言われています。 敗戦6ヶ月後の 21年2月に突如、新円切替と預金封鎖及び資産没収のための財産調査が行われ、旧円は約3週間にうちに新円に交換しないと無価値になってしまうことや交換した新円は預金する事が義務づけられた。預金封鎖後は毎月の生活費しか引き下ろせないこととなった。
日銀が発行紙幣を大幅に増やした事もあって、さらに急速にインフレが進み、農産物などは殆ど物々交換でしか入手出来ない状況となった。それらにより、戦時国債等は紙切れ同然になり、0.1%以下といわれる米ドルを持っていた人を除いて、ほぼ100%の人が殆どの財産を失った。
その後、5年間は大不況とインフレとが同時に起こるスタグフレーション状態となり、治安の悪化や社会混乱が続き、食料不足から多数の餓死者も出た。その5年間で、小売物価が、物によって違うが、敗戦時の約100倍となるというハイパーインフレにみまわれた。
昭和25年に朝鮮戦争が勃発し、アメリカの政策が、日本をソ連や中国など東側国との間の砦とする方針に変化して、日本に大支援し始め、日本のスタグフレーションは終了した。」と言う時代があったのですね。
この漫画は、この頃の作品のようです。
サザエさんは、靴の値段が7割も値上げする。
今の安いうちに買っておこうと考えたのですね。
マスオさんも、同感し、家を出る時は、自分の靴とサザエさんに言われた二人の靴を[無理をしてでも買っておこうと]と決意していたんでしょう。
しかし、この決意も、居並ぶ、うら若い美人のキャンペンガールに声をかけられると、忽ち、崩れてしまったようです。
サザエさんは、帰って来たマスオさんから、買って貰える靴の話を聞けると思っていたのに、意に反し、マスオさんは、タバコの値上がりを予測し、鼻の下を長くし、娘さん達から次々とタバコを買い、コートのポケットに詰め込んで帰って来たのでしょう。
サザエさんが、以前、挨拶していたように、マスオさんは人の良いのが珠に瑕のようです。
キャンペンガールに惹かれたのであれば、サザエさんに対して大変失礼な男で、人良さに加え、所謂「スケベ」なのが珠に瑕かもしれません。
サザエさんの靴も、クツが7割も値上がりする前に買ってあげようと思った筈ですから!
「スケベ」なのが災いしたのでしょう。
サザエさんの逆鱗に触れなければいいのですが!
四駒目の先に修羅場があったかも知れません。