温泉の大浴場です。

僕は、お父さんとお爺さんと一緒に。

湯に浸かりに行きました。

広い湯船が幾つも繋がっています。

広い床には、壁際に、水道とシャワーが、幾つも取り付けられ、隣同志が仕切りで区切られています。

それらの仕切りの中で、お湯から出てきた人が、頭、髪や体を洗っています。

僕は、お爺ちゃんを見失いました。

仕切りの中にいる人は、後ろからではよく区別できません。

僕は、お爺ちゃんは何処にいるのかなーと思いました。

一寸前まで、湯の中に一緒に浸かっていたので、未だ、洗い場の何処かにいる筈です。

僕は、おじいちゃんは何処かなと、お父さんに聞きました。

お父さんは

「後ろから問いかけたも駄目だよ。他所のお爺さんかもしれないから失礼になるよ」

と、僕をとめました。

でも、どうしてもお爺さんを探して、黄金の風呂桶に入りたい。

風呂桶が黄金でできているから。

絶対その黄金の湯船につかりたい。

お爺さんと一緒に浸かりた。

後ろから見ただけでは、どの人がお爺さんか直ぐわからないので、

「お爺ちゃん何処」

大きな声で叫びました。

すると、僕が立っているところから、少し離れた仕切りで、シャンプーで頭を洗っている老人が、

「坊や俺の事かい」

と振り返りました。

その顔を見て、僕はびっくりしました。

その老人は、顔面が真っ白で、目も鼻も口もない「のっぺらぼう」です。

僕は、驚いて床の上に尻餅をついてしまいました。

ぺターンと言う音を聞いたお父さんが

「どうしたんだ」

と駈けつけてきました。

僕は

「怖いよ、あそこにお化けだ、のっぺらぼうだよ、お父さん」

とお父さんのところに駆け寄りました。

お爺さんは、何についていないのっぺらぼうの顔の前を両手で拡げるように撫でると、

皺くちゃのお猿のような顔が出てきました。

僕は、やっぱり

「怖いよ、お父さん」

と傍に寄って行きました。

のっぺらぼうに間違われたお爺さんは、髪を洗っていたシャンプーの泡が、顔一杯にくっ付いていたのです。

その泡をシャワーで流すと、

「坊や、どうしたんだい」

とやさしそうな笑顔を僕の方に突き出して来ました。

僕は、その笑顔を見てホッとしました。

僕は

「ビックリさせてご免なさいと」

と謝りました。

黄金の風呂桶の方から僕を呼ぶ声がしてきたので、そちらを良く見るとお爺さんが手招きしていました。

急いでお爺さんのところまで行きました。

お爺さんに黄金の風呂桶に入れて貰いました。

僕は、「良い湯だな」と思わず鼻歌を歌い、キラキラと光る黄金の風呂桶の中で金持ちになった気分でした。