(21)門を通り、中に入ると、葦や藁で葺いた竪穴式住居が沢山あり、それらの住居の中から、老若男女が出てきて、鬼太郎一行を、じろじろ見ながら迎えてくれました。

殆どの男達は、口の周りに見事な髭をたくわえ、強そうに見えます。こんな男たちが、鬼太郎一行を屋形の中に案内し、大広間に導きました。

正面には、木彫りの縁取りをした大きな椅子が、花に飾られて置いてあり、柔らかな良い香りが立ち込めていました。椅子の前には、茶色の大きな熊の毛皮が敷いてありました。

其処には、美しく着飾った若い娘達もいました。

暫くすると、奥の方から、模様を入れて編んだ幅広の紐を白髪の頭に巻き、白い鼻髭と顎鬚をたくわえた老人が出てきて、その木彫りの縁取りをした椅子に、厳かに腰掛けました。

その年老いた長(おさ)は、「鬼太郎よ、遠路はるばる良く来てくれた。御苦労であった」と労をねぎらってくれました。

(22)それから、長(おさ)は、鬼太郎を、この鬼が島に呼び寄せた理由や鬼が島の現状を長々と話し始めました。

『鬼太郎よ、お前が住んでいた国(所)は、大きな四つの島からなっている。

俺達、ここに住んでいる者達の先祖は、その国の一番北にある四角形の島に住んでいた。

俺達の先祖は、冬は雪に埋もれる島で、訪れる春、夏、秋の季節と、そして厳しい冬の季節の移り変わりの中で、動物を捕り、穀物を作り収穫し、平和に暮らしていた。

ところが、他の島の住民達が、俺達が住んでいる四角い島に攻め入り、俺達を苦しめた。勇敢に戦ったが、かれらの数の多さ、卑劣な戦い方に敗れ、やむなくこの島に逃れて来たのだ。

俺達が、ここに移り住んだ頃は、この島には、ほかの住民はおらず、再び、俺達の民族は、平和に暮らすことが出来たんだ。

ところが、時が過ぎると、大きな島に住んでいた民族の一部が、この島の周りに、沢山いる魚やカニや生茂る海草を取るため移り住み、住みついてしまい、その数も次第に多くなり、俺達の縄張り近くにも住むようになった。

元々、俺達住民は、おとなしい性格だ。しかし、髭や体毛が多い。ノッペリとした他の島の住民には、俺達のような、でかくて、体毛も濃い者は、鬼のように見えたのかもしれない。いつの間にか、我々が住んでいる、この島は「鬼が島」と呼ばれるようになったんだ。

そのノッペリとした民族が、あろうことか、最近、図々しく、「お前達は、騒々しい、邪魔だ」などと言いだし、「島から出て行け」などと俺たち民族に言うようになった。

一番大きい島の長(おさ)となった、「目のギョロリ」とした、ハトポッポ見たいな奴は、ノッペリとした民族の民衆に対して、先住の俺達民族を「少なくとも、鬼が島の外に追い出す」と約束したんだ。

でも、最近、大きな領国の民族が、この島に近い、もっと小さな、小さな島のその周辺が、「宝の出る島」であることに、気づき、その島の周辺に船を浮かべて、魚やカニなどを横取りしようとする悪さをし始めたんだよ。』と切れ目なく話し続けました。