(19)さらに、次の日、飛び上がっていった雉が、「島が見えるよ」と勢いよく戻ってきました。

急ぎ、道の海側に駈けていくと、昨日より、近い位置に、より大きい島がハッキリと見えます。そして、道の前方、遠くには、港があるらしい様子です。

鬼太郎は「あの島は、俺が目指している島に間違いがない、皆、ご苦労をかけた有難う、もうすぐ島に行ける、頑張ってくれ」と言い、港の方に急かされるように歩き始めました。目指す島があれだと思うと、足が元気を取り戻し、港までは直ぐ到着してしまいました。

港に着くと、漁民に、「俺たちをあの島」まで送ってくれるように頼みました。

漁民は、鬼太郎の恐ろしげな顔を見ると、断り切れず「はい、どうぞお乗りください」と一行が乗れる船まで案内しました。

皆が乗ると、船頭が櫨を漕いで、港を離れました。

太陽が真上にある頃、港を出て、島の港に着いた時は、太陽が海にまさに沈もうとする、うす暗くなりかけた時でした。

その港には、島民がいましたが、鬼太郎の姿を見ると、家に帰ってしまいました。

鬼太郎は、犬と猿に島の様子を探るように命じました。暗くなれば、鳥目の雉は、夜には目が利きませんので、役割を果たせません。籠の中でお休みです。

命じられた犬は、道を駈けていき、猿は、森の中に入って行きました。どうやら、木に登って遠くを見ているようです。

暫くすると、犬が勢いよく戻ってきました。そして「鬼太郎様、鬼太郎様、貴方と同じ姿をした人達が住んでいるお城があります」と言いました。

(20)鬼太郎は、犬・猿・雉の仲間と一緒に旅をしている間、食べ物を分け合ったり、彼らに役目を言いつけて、やって貰ったり、互いに助け合いながら過ごしていた間に、仲間をいたわり、励ましたりする心が芽生え、優しい人間のように変わっていました。もう以前の荒らしい風情ではなく、顔までも優しげに見えます。

さて、犬は、「貴方と同じ姿の人がいました」と言いましたが、人のように変わった鬼太郎を、彼ら鬼ではなく人間だと認めていたのでしょう。

犬に先導されて進んでいきます。

と、山を後ろにし、「蓮が花を咲かせて生い茂り、その葉の間から見える水の中には、大きなコイやフナが泳ぎ、また底の方にはナマズも動いている堀」や、「かぼちゃ、きゅうり、スイカ、サツマイモ、山芋、大根、人参、ごま、トウモロコシなどの野菜、リンゴ、カキなどの果物などなど、様々な作物を作っている広々とした畑」、さらには、「牛、豚、ウサギ、ヤギ、馬、鶏を飼っている牧場や飼育舎」がありました。馬も牛も大型です。

その畑では、鍬で畑を耕したり、種をまいたり、作物を収穫したりしている者たちがいました。

不思議なことに、野菜や果物は、鬼太郎が田舎で見ていたものと、まるで大きさが違います。例えば、かぼちゃは、大きく、赤ん坊なら、入ってしまうくらいの大きさに育っていました。

これらに囲まれた縄張りに、木の塀を巡らし、櫓まであり、その奥には、お城のような木作りの大きな屋形(犬が間違えたように、まるでお城のような屋形です)が、どんと、構えているところに来ました。

また、裏山には、いろいろな広葉樹の木々が鬱蒼と茂り、その中に、杉の木も、大きく伸びていました。しかし、山の頂上は、なんだか、平らな盆地のようにも見えます。

彼らは、畑や堀の間の道を通り過ぎ、その塀の門の前で立ち止まると、その頑強な門の扉を、鬼太郎は「ドンドン」と叩き「頼もう、頼もう」と大声で怒鳴りました。

暫くすると髭だらけの大男が出てきました。

鬼太郎は「俺は、呼ばれてきたものだ」と申しました。男は「お待ちしていました。どうぞ、どうぞ」と中に招き入れました。