(10) 鬼太郎は、犬と猿を引き連れて、道を歩き続けています。犬が、先に走り、前方の様子を探ったりします。猿は、生意気にも、時々、鬼太郎の肩に乗って、楽をしています。
広い草藪の草原に出てきました。そこは、広々としていて、蝶々やトンボやバッタが飛び交い、それらの昆虫を捕え食べようとする小鳥たちも集まっていました。鳥たちの中に奇麗な雉もいました。
雉は、バタバタと羽ばたいて、飛んでいき、草の中に見えなくなります。草の中のバッタを啄み(ついばみ)食べています。この様子を見ていると、雉は、同じことを繰り返し、繰り返して、沢山のバッタを食べていました。
猿は、鬼太郎の肩の上で、雉の様子を見ていましたが、突然、飛び降りると、草藪の方に駈けていきました。雉に気づかれない方向から近寄ると、雉が、草の中でバッタを追いかけ、飛び上がった瞬間、猿は跳び上がり、雉を見事捕えました。
(11)鬼太郎は、直ぐに、猿のところに駈けつけました。雉は鬼太郎に向かって、「猿に捕まりました。助けて下さい。」と助けを求めました。
鬼太郎は、猿に向かって「逃がしたら駄目だぞ。でも雉が苦しまないように掴んでおれ」と命じました。
その頃、遥か先の方まで、進んでいた犬が、何事が起ったのだろうという様子で、駈けつけてきました。
鬼太郎は、大人しくなった雉に「俺とこの犬と猿は仲間だ。お前も俺達の仲間になれ、そうしたらお前の命を助けてやるぞ」と云いました。
雉は、この怖そうな鬼太郎、足の速い犬、悪賢そうな猿の仲間からは、例え、羽を使って飛んでも、[俺の羽は、ほかの鳥に比べ、ひ弱だから、遠くまでとべない]と、逃げるのを諦めて仲間になろうと思い、「はい、仲間にしてください」と言いました。
鬼太郎は、「お前は、俺達より高いところ飛べるから、見張りとか、遠いところを見る役目をしておくれ」と役割を与え仲間にしました。残っていた「きび団子」を、食べやすいように千切って与えました。
(12)これで、一人と3匹からなる仲間が出来ました。勿論、彼らの前には、キツネやタヌキも現れました。しかし、鬼太郎は、騙し、嘘の得意な、その上、臭い糞をする彼らが好きではありませんでした。
ある里山に近いところを歩いていたときには、大きな月の輪熊に出会いました。その時、熊は、鬼太郎仲間を襲うことなく、強面の鬼太郎を見て、また、吠え続ける犬と叫び騒ぐ猿と雉に、恐怖を覚え森の中に引きかえしていきまして。
鬼太郎も、体は大きいが、大食漢で役立たずの熊を家来にしようとは思いませんでした。
(13)この仲間で、鬼が島へ行こうと決めました。
ひなびた家がポツンポツンと見え、田んぼや畑が広がった、とある田舎に通りかかりました。
住民は、鬼太郎の仲間を見ると、とくに鬼太郎の怖そうな顔を見ただけで家の中に引きこもりました。
お婆さんが作ってくれた「きび団子」もほとんど食べ、残り少なくなっていました。
そこで、ある家の木戸口で、戸をドンドンと叩き、恐る恐る出てきた「おばさん」に、「俺たちは、旅を続けている。お願いだから、オニギリか団子を作って下さい」とお願いしました。「おばさん」は、鬼太郎を怖れ、「はいはい、作って差し上げましょう。暫く待って下さい」と言いました。
そう言った後、「おばさん」は、大きな桶を持って家を出、数軒の家を回っています。鬼太郎は、これはしまった、俺のこと振れ回って、何か企んでいるいると思いましたが、平然としたふりをしていました。
おばさんは、桶を重そうに抱えて戻ってきました。そして、「お前さん達、長い旅をしてきたんだろう。構わないから、家の中でお休み、その間に、おにぎりと団子を作っておくよ」と言いました。
眠つたら、何が起こるかわからない、何をされるかわからないと思いながらも、疲れに、つい眠ってしまいました。犬、猿、また雉までも眠ってしまいました。
(14)どれくらいの間、眠ったのでしょうか、おばさんが「もう起きなさい」と起こしてくれました。何事もおきず、ゆっくりと眠らしてくれたのです。そして、「おにぎりと団子を作ったよ」と沢山のお弁当を差し出してくれました。
おばさんは、それは、それは、優しい人間でした。鬼太郎は、「どうもありがとうございました」と丁寧に頭を下げ、お礼を言いました。
おばさんは、水を入れた竹筒までも準備してくれていました。