校長は、まず、携帯電話のことを切り出した。取り上げている携帯を本人に渡してやってほしい、と。




夫は、




「確か半年前にも担任から同じように言われて、携帯を渡したところ、本人が彼女をますます追いかける





ようになって、繁華街に行き、補習をさぼり始めた経緯がありましたが、それでも今回渡すということです





か?」




校長はこの話を知らなかったらしく、横にいた担任に確認して、




「はい、それでも渡して、使いかたを覚えていくほうがいいと思います。」と言った。








でも、本題は次からだった。




校長:「息子さんを殴ることがあるようですが。本当ですか?」





夫:「いいえ、ありません。」




思わず、夫の横顔を見た。校長の顔をまっすぐ見ている。




小学校高学年で反抗期になってから、夫は、息子の言い方が気に入らないと




殴ることがあった。一発ではすまなかった。半年に1度だったのが、三か月に一度になって、素行が悪く




なるとともに、回数は増えた。息子は絶対にやりかえさず無抵抗だった。どんなに夫にやめてほしいと




言っても無理だったから、否定する夫に本当に驚いた。




校長:「本当ですか?」





夫:「本当です」




退職間近の校長は、




「そうですか。ちなみに息子さんの初めての記憶は、お父さんが怒ってお皿を割ったことだそうですが、





そういうことありましたか?」





と私にきいてきた。




息子が3才になる前だったか、夫がキレて、お皿を割ったことがあった。実家からもらってきた空色と




紫のきれいな菓子鉢。声もでない息子を抱き上げて、ベランダに出て、「大丈夫よ」と




言ったことがあった。生まれて初めてお皿をわる人を見たが、それが自分の夫…。




校長:「その時、お母さんが泣いていたと息子さんは言っています。」





「私は今までに生徒を蹴って殴ったことが一度あります。それはその生徒が自殺しようとしていたのを





止めた時です。そういう命にかかわる時でないと暴力はふるっはいけないのです。」




夫:「私が中学の時は殴る先生もいて、そういう先生がいるからこそ、クラスが引き締まっていたと思って





います。子どもにも体罰でわからせなければいけない時があると思っています。」





校長「体罰はどんどんエスカレートするうえに、気に入らないときは暴力を振るえばいいと学習してしまう





こわいものなのです。今後一切、体罰はやめていだたきたい。」








校長:「そして、今後の進路ですが、もう少し息子さんに寄り添って一緒に考えてもらえませんか?」





夫:「平気で授業を抜け出し、遅刻したりしている現状から高校にまともに通うとは思えません。





ここで、親がどんなに道を用意しても、それは本人のためにならない。





本人がどうしても高校に行きたいとなるまで待つつもりです。学年が遅れてもかまいません。」





校長「どうも、息子さんに冷たすぎるのではないですか?私は息子に障害があり、なんとか一人前になる





ようにありとあらゆる工夫をし、考えてきました。親として当然かと思いますが。」





夫「それはきちんとヤル気があったからで、今の息子に親が道を用意することは本人のためにならないと





考えています」





校長「息子さんは大変いいお子さんですよ。どうしてもっとかかわってやらないのでしょう。ご家族で





よく話し合ってほしいと思っています。」






というような話の後、




「これから、職員会議で息子さんの処分を決めます。明日、処分内容含めお話したいので、





もう一度来校してください。このように前日にご両親を呼ぶのは異例なのですが、どうしても





お話したかったので来てもらいました」




これで、面談終了。








その後、夫婦で予定があったので、車に乗っていると、夫の運転が今までにないくらい荒かった。




いくらイライラしているとはいえ、そうやって怒りを示す様子に心が凍りそうだった。




私「どうしてウソをつくの?殴ってないなんて」と聞くと




夫は信じられないことを言った。




つづく