審判の時、裁判官から
「息子さんの長所はどんなことですか?」と
聞かれた。
非行っ子になってからの言動は「信じられない」」こと「許せないこと」ばかり。
うそ、家庭内暴力、万引き、教師への暴言、異性のこと、狂った金銭感覚、無断外泊などなど。
悪い点は限りなく挙げられても、長所なんて思いつかなくてすぐに答えられなかった。
裁判官、国選弁護士からも
ハルオのために厳しいけれど暖かい言葉かけが続いた後、
夫が「ハルオは口ばかりで信用できません。」と言い放った。
その直後の私への質問。ここで私までが「長所はありません」なんて
言ってしまったら、ハルオは寂しいのではないかと思った。
で、頭フル回転させたら、思い出したことが二つあった。
①夜中に迎えに行った時、道路の真ん中を車と並行して走っている大型犬がいた。
ハルオは「お母さん、Uターンして犬を確保しよう。このまま大通りに出ると危ない。」
と言った。Uターンしてから、ハルオは車を降りて犬を全力で追いかけ、
飼い主の家をみつけて、届けたのだった。25時ころのこと、
金髪の不良少年が飼い犬と玄関先に立っていて、飼い主さんは驚いたと思うが、
すごく喜んでくれた。ハルオは
「こういこと、知らんふりできないんだ」と言っていた。
②ハルオの無断外泊がひどくなった昨年12月。
義母が危篤になり、家は重苦しい雰囲気。
電話が鳴るたびに義母の病院か、警察かとドキドキした。
加えて、ハルオのきょうだいが事故にあい病院に運ばれた。
命に別条はなかったけれど、大学病院に通う日々が続き、
半年後、一年あとと経過をみていくように診断された。
この子はハルオが非行っこになってからの家庭の荒れ方に心を痛め、
誰にも相談することもできずに頑張って学校に通い、明るく過ごしてきた。
それなのに、この子が事故にあってしまった。
事故の翌日、ハルオが久々に帰宅。
ちょうど洗濯ものを干している時だった。
久しぶりにハルオの顔を見ていろんな感情が渦巻き、ただ、泣いてしまった。
「おばあちゃんが危篤で、きょうだいが大けがをし、大変な時に無断外泊ばかりしているって
どういう神経なんだろう」とか
「とりあえず、ハルオの無事な顔を見られてよかった」とかいろいろ。
するとハルオが黙って私の背中をさすったのだった。
あれ?この子にこんな優しさが残っていたのかなって思ったし、意外だった。
背中をさすりながら
「お父さんもお母さんも大変だな。ぼくがこんななのに次々といろんなことがあって…」
この二つをかろうじて思い出し、
「親が思っているよりも繊細で、弱いものの気持ちがわかる本当は優しい子です」と答えた…。
それにしても、ハルオが自分のことを「ぼくがこんななのに」って客観的にとらえていたことも
意外だったし、なんだか不憫に思ってしまった。
今もわがままで、やりたい放題のハルオ。
心の片隅でいいから「優しさ」がありますように。