一輝は、小浜に来てから、のびのびしてきた気がする。

私は、自分の息子にリラックスした状態で、催眠療法をかけた。

そこで初めて、一輝が、知らない大人を恐がる理由を知った。

一輝は、落ちてた財布を拾って交番に届けようとしたところ、落とした本人と周りの人達に、盗んだと間違われて、怒られたせいで、知らない大人は、いきなり怒ると思ってしまったらしい。

私は、ただの不運の偶然が、息子に襲ってきたことを知った。

四歳の子供に、それが理解できるはずもない。

私は、ゆっくり・ゆっくり、心を溶かしていった。

だが、その間にも腹部に激痛が走る。

その頃、久美子のところに響子がやってきて、久美子は、響子に私の研究データのコピーを渡した。

「響子、癌患者を必ず救えるようになろうね。

三人で……協力して」

響子は頷いた。

「そうね。

私達が組めば、必ず成し遂げられると私は思う。

久美子、何か隠してることあるんじゃない?

恵里の研究データを、あなたがもってるなんて、おかしいでしょ?

恵里が、人生かけた研究データを、渡すなんて何かなきゃ考えられない。

何、隠してるの?」

響子は厳しい表情で聞いてきた。

私は溜息をついて

「さすがは響子、恵里の予想通り、すぐ気づいたね。

あなたの言う通りよ。

恵里は、進行した胃癌にかかってる。

恵里の腕で40%あるかどうかだって。

癌治療の腕は、国谷先生に近い腕をもつ、あの恵里がね。

意味わかるでしょ?」

響子は冷や汗かいた。

恵里の腕でそれなら、自分なら30%あるかわからない。

いや、感情入れば、確率はもっと下がる。

癌の名医は、今、日本にいない。

進藤先生達も、得意分野が違う。

ランフォードは、アメリカに戻った。

だとすると本当に難しい。

高山隆では、感情が入りすぎて駄目だ。

となると……。

そして、小浜では恵里が激痛で動けなくなっていた。

「一輝、行きなさい。

勇気をもって、あなたは高山隆の息子なのよ。

大丈夫。乗り越えられるよ」

私は精一杯の笑顔を向けた。

一輝は、その笑顔を見て走った。

お母さんを救えるのは、僕だけなんだ!

そして、知らない家に行き

「お母さんを助けて下さい」

と頭を下げた。

皆が、協力して北栄総合病院に自衛隊のヘリで、救急搬送した。