あれから、月日が経ち、私は男の子を出産した。

問題なのは、子供の名前である。

二人共に、生まれてきてから考えると決めてたため、男の子か女の子かすら聞かなかった。

隆は子供を抱っこして、もう、笑みが止まらないという感じで本気で喜んでくれた。

そして、問題なのは名前である。

私達が、名前で悩むのには、大きな理由がある。

私も隆も、たくさんの死を見てきた。

美紀のように若くして、亡くなる患者が、実際に十人以上、私が知る限りでもいた。

でも、患者はその瞬間・瞬間を輝かせてきた。

だから、なかなか名前をつけることはできなかった。

多くの死んでいった患者に恥じない名前を、子供につけてあげたかった。

人はいつ死んでもおかしくない。

だから、私達にとっての命の大切さの証が、我が子なのだ。

隆は外の空気を、吸ってくると言って、自動販売機のところに行くと、そこには、一樹がいた。

一樹は一目、隆を見て

「お前、子供の名前で迷ってるんだろ?」

「お見通しか・・・・・・。さすがだな」

「お前達は、真面目すぎるからな。

これから、明の墓参りに行かないか?」

俺は頷いて、一樹について行った。

一樹は、明のことを詳しく話してくれた。

そして、明の墓の前に辿り着いた。

墓には既に花が添えられていた。

「誰か来たみたいだな、

明の奴、堅苦しい奴だけど、どういうわけかモテルんだ。

男女問わずな。

何でだかわかるか?

あいつは、何をするにしても、他人から見ると頼りがいがあって、優しくて輝いて見えるんだ。

そういう意味では、お前と同じだ。

国谷先生に次ぐ最年少で、医者になった天才のお前とな。

だが、二人に共通して言えること、どんな時にも輝いていると思ったら、精神面に二人揃って弱点を抱えてる。

それを、表に出さないのが、明で、表に出すのがお前だ。

恵里にとっては、明の弱点など簡単にわかっただろうな。

逆に見栄を張ってる、明が、可愛いそんなところだろうな。

明にとっては、話さなくても、わかってくれる相手ということで、心地良かったはずだ。

だが、これだと恵里に負担がかかる。

自分の辛い事を、自分から語ってくれない辛さって奴があるからな。

一方、タイプ的には同じでも、自分の弱いところを背負い込まずに、ちゃんと話してくる、お前に恵里は惚れたんだ。

今度は恵里の方が、心地良いってことだ。

そう、お前と恵里は似た者夫婦だ。

何事も一生懸命になりすぎて迷い、人の悩み事を、自分のことのように迷うだろ?

だから、お似合い夫婦ってわけだ。

だが、お前と出会った時の恵里は、精神的に疲れ果ててた。

だから、尚更だ。

お前と一緒にいると、本心で語り合えるから、楽なんだ。

ここまで言えばお前ならわかるはずだ。

ありのままの姿でいてやれ。

それが、恵里の幸せだ。

いいな?」

俺は頷いた。

というより、恵里だからこそ俺は、ありのままでいられるんだ。

そして、新井教授を始めとした偉大な人物達の話を聞いて決心した。

俺は、恵里に真面目な表情で言った。

「恵里、この子には誰よりも輝いてもらいたい。

だから、俺は一輝と決めたんだけどどうかな?」

恵里は目を輝かして

「いい名前ね。私達の子供の名前にピッタリだよ」

そう言うと、恵里は一輝を抱っこして

「あなたは一輝よ。

優しいお父さんの気持ち、将来、理解できる時がくるはず。

だから、誰よりも輝けるような人になってね。

それが、お父さんとお母さんからの願いよ。

一輝」

一輝は、その言葉を聞いた後、そのまま眠ってしまった。

「こいつは、将来、なかなかの大物になるかもな」

そう言って私達はわらった。