さくらの木

もしも、母さんが叱らなきゃ、
咲いたさくらのあの枝へ、
ちょいとのぼってみたいのよ。

一番目の枝までのぼったら、

町がかすみのなかにみえ、

お噺のくにのようでしょう。

三番目の枝に腰かけて、

お花のなかにつつまれりゃ、

私がお花の姫さまで、

ふしぎな灰でもふりまいて、

咲かせたような、氣がしましょう。

もしも誰かがみつけなきゃ、ちょいとのぼつてみたいのよ。

空色の花

青いお空の色してる
小さい花よ、よくお聴き。

むかし、ここらに黒い瞳の、
かわいい女の子があって、
さっき私のしてたよに、
いつもお空をみていたの。

一日青ぞら映るので、
お瞳はいつか、空いろの、
小さな花になっちゃって、
いまもお空をみているの。

花よ、わたしのお噺が、
もしもちがっていないなら、
おまえはえらい博士より、
ほんとの空を知っていよ。

いつも私が空をみて、
たくさん、たくさん、考えて、
ひとつもほんとは知らぬこと、
みんなみていよ、知っていよ。

えらいお花はだァまって、
ぢっとお空をみつめてる。
空に染まった青い瞳で、

いまも、飽きずにみつめてる。