清美が去った後、ポセイドンは、気配を消して修行を見ていた人物に話しかけた。
「レナ、エレナに娘だと名乗らなくて良かったのか?」
レナは姿を見せて
「この距離が、一番ベストなんです。
あの娘が、大学三年生になれば、壮絶な死闘が始まるんですから。
私はあの娘を、守ってあげるわけにはいかないですからね。
自分自身で乗り越えてもらわないと、この先、あの娘は生き残ることはできません」
ポセイドンは溜息をついて
「そうだな。お前も南アメリカ大陸に行かなきゃいけないしな」
「ええ、そうです。それより、義父上、テスカトリポカ様の分身を、オリジナルの姉上に渡しますので、切り離しますよ」
そう言うと指をパチンとレナが、鳴らしただけで二人は離れた。
「ご無沙汰しております。
テスカトリポカ様」
テスカトリポカは笑みを浮かべて
「全て計画通りに進んだようだな?
レナ」
「はい。ディオスのことを、皆、父上だと思い込んでいます。
姉上は、本物のラクールで眠りについて、力を蓄えています。
誰も、オリジナルの姉上が、まだ、眠ってるとは思っていません」
「そうか。さすがだな。
レナ。
ワシの目に狂いはなかったようだ。
それで、フィクサーが送り込んできたユリアの偽者は、自分がユリアだとまだ、思い込んでるんだな?」
「はい。父上は、あの娘を味方につけるべく、エレナとヘーリオスに任せるそうです」
「わかった。ワシは、オリジナルのユリアの元に行くとしよう」
私は頭を下げた。
テスカトリポカ様は、あのラクールに瞬間移動した。
「では、義父上、母上と全時空大神王神を代わっていただきます」
そこに、ガイアが現れた。
「ガイア、本当にいいんだな?」
「はい。レイン様の命令は全てに優先されます。
それは、あなたもおわかりでしょう?」
「わかった」
そして、ポセイドンと私は、瞬間移動した。
こうして、ガイアが、全時空大神王神になった。
その頃、アッシュールのいる病室に本物のレインが、姿を現した。
アッシュールは、レインを見て
「お前が、ワシに会いに来るとは思わなかったよ。
レインよ」
レインはアッシュールの顔を見ながら
「あなたと会うのは、これが最後です。
その前にもう一度、あなたに確めておきたいことが、ありましてね」
「死刑制度廃止のことだな?」
「ええ、その通りです。
私の最強の懐刀であるディオスにやらせる以上、重要なことですから。
何故、そこまで死刑制度廃止に拘るのですか?
容赦なく、犯罪者を斬り捨ててきた、あなたの意見とは思えないんですけどね」
「確かに、ワシは容赦なく斬り捨ててきた。
だが、それは妖龍族限定の話しだ。
お前だってわかってるはずだ」
レインは苦笑いしながら
「そう言うと思いましたよ。
では、本題に戻って、何故、死刑制度を廃止する必要があるのか、話してもらいましょうか?」
「わかった。この世界の戦争が終わった先、世界は人間達のものになる。
確かにワシやお前なら、100%犯人を間違うことはない。
だが、人間には100%はない。
冤罪で死なせてしまう可能性も0ではないからだ」
「それを言い出したら、刑務所に入れた時点で、まずいことに変わりはありませんよ。
無期懲役なら、無罪の人間を一生いれることになります。
そして、もう一つ、死刑制度は、犯罪を抑止するためのものでもあります。
それを、どう説明しますか?」
「お前は、何の反省もしてない奴を、ただ、死刑にすることが、解決策になると思うか?」
「立場によりますよ。
犯人を、死刑にすることで、犯罪が減るなら、いいと思いますよ。
それに、科学捜査はあなたが思ってる以上に、発展しています。
先入観をもって、自白の強要をしない限り、冤罪は、そう簡単におきませんよ」
アッシュールは笑みを浮かべて
「お前もわかってるんじゃないか。
それが、答えだよ。
手柄を立てることだけを、考えてる刑事、即ち、出世のことしか頭にない刑事は、ちゃんと調べるとはいいきれない。
被疑者を逮捕することが、点数となって出世に繋がる。
これが、刑事の冷静な判断を失わせる。
だから、冤罪が起こるんだ。
それと、前科があるというだけで、犯人だと疑われる世の中だ。
もし、はめられただけなら、先入観だけで、証拠が一致したということで犯人にされかねない。
それが、科学捜査の大きな欠点だ。
だからこそ、死刑制度を廃止すべきなんだ。
お前だって本当は、わかってるんじゃないのか?」
レインは笑みを浮かべた。
「ええ、あなたの言うことは正論ですよ。
でも、被害者遺族は納得しないでしょうね。
ま、死刑制度は一種の復讐殺人というあなたの考えはわかりますけどね。
そして、犯罪者とはいえ、手を下さなければならない人達がいる、それが、死刑制度だとあなたが、考えてるのもわかりますよ。
しかし、正論だけでこの問題は解決できません。
人の憎しみはそんなに、簡単に解決できるほど、甘いものじゃないですからね。
娘が強姦されて殺されて、
あなたは、許せるんですか?」
「お前ならそう言うと思ったよ。
お前が、変わったのもクラリスが、殺されてからだったな」
今でも忘れられない嫌な思い出だ。
無惨な妹であるクラリスの遺体を目にした時の怒りは、レインを暴走させた。
帝神族宰相率いる敵を、レイン一人で壊滅させた。
クラリスを殺した男こそが、実は帝神族宰相だった。
そして、この宰相が、エンリルに女遊びを教えた張本人だった。
そういう因縁があるのだ。
そう、憎しみは憎しみを呼び、そこには虚しさしかない。
人を殺して、復讐すれば、次の殺人が起こる。
復讐の連鎖にしかならないのだ。
そう、例え死刑になったとしても、問題は解決しない。
被害者遺族にとっては、終らないのだ。
死刑になったところで。
だが、生きてるだけで許せない。
そういう感情が、あるのも事実だ。
それが、罪というものだ。
その中で自分の死を前にして、アッシュールは決断した。
死刑制度を廃止して、死ぬまで刑務所に入れて苦しませてから死んでもらうという決断を。
レインとアッシュールは目をはずさず、睨みあった後、レインはアッシュールを立てた。
「今回は、冥土の土産にあなたを立ててあげますよ。
ただし、すぐひっくり返されるでしょうけどね」
「ワシが、そんなことわからないと思うか?」
「いえ、一応、言ったまでです。
私も、死刑制度廃止には反対なので。
しかし、最後のわがままくらい束の間の夢として、見せてあげますよ。
それが、親孝行です」
これが、二人の最後の会話になった。
レインが出て行った後
「レインの心を救う方法が、ないものか・・・・・・」
アッシュールは目を瞑った。
「レナ、エレナに娘だと名乗らなくて良かったのか?」
レナは姿を見せて
「この距離が、一番ベストなんです。
あの娘が、大学三年生になれば、壮絶な死闘が始まるんですから。
私はあの娘を、守ってあげるわけにはいかないですからね。
自分自身で乗り越えてもらわないと、この先、あの娘は生き残ることはできません」
ポセイドンは溜息をついて
「そうだな。お前も南アメリカ大陸に行かなきゃいけないしな」
「ええ、そうです。それより、義父上、テスカトリポカ様の分身を、オリジナルの姉上に渡しますので、切り離しますよ」
そう言うと指をパチンとレナが、鳴らしただけで二人は離れた。
「ご無沙汰しております。
テスカトリポカ様」
テスカトリポカは笑みを浮かべて
「全て計画通りに進んだようだな?
レナ」
「はい。ディオスのことを、皆、父上だと思い込んでいます。
姉上は、本物のラクールで眠りについて、力を蓄えています。
誰も、オリジナルの姉上が、まだ、眠ってるとは思っていません」
「そうか。さすがだな。
レナ。
ワシの目に狂いはなかったようだ。
それで、フィクサーが送り込んできたユリアの偽者は、自分がユリアだとまだ、思い込んでるんだな?」
「はい。父上は、あの娘を味方につけるべく、エレナとヘーリオスに任せるそうです」
「わかった。ワシは、オリジナルのユリアの元に行くとしよう」
私は頭を下げた。
テスカトリポカ様は、あのラクールに瞬間移動した。
「では、義父上、母上と全時空大神王神を代わっていただきます」
そこに、ガイアが現れた。
「ガイア、本当にいいんだな?」
「はい。レイン様の命令は全てに優先されます。
それは、あなたもおわかりでしょう?」
「わかった」
そして、ポセイドンと私は、瞬間移動した。
こうして、ガイアが、全時空大神王神になった。
その頃、アッシュールのいる病室に本物のレインが、姿を現した。
アッシュールは、レインを見て
「お前が、ワシに会いに来るとは思わなかったよ。
レインよ」
レインはアッシュールの顔を見ながら
「あなたと会うのは、これが最後です。
その前にもう一度、あなたに確めておきたいことが、ありましてね」
「死刑制度廃止のことだな?」
「ええ、その通りです。
私の最強の懐刀であるディオスにやらせる以上、重要なことですから。
何故、そこまで死刑制度廃止に拘るのですか?
容赦なく、犯罪者を斬り捨ててきた、あなたの意見とは思えないんですけどね」
「確かに、ワシは容赦なく斬り捨ててきた。
だが、それは妖龍族限定の話しだ。
お前だってわかってるはずだ」
レインは苦笑いしながら
「そう言うと思いましたよ。
では、本題に戻って、何故、死刑制度を廃止する必要があるのか、話してもらいましょうか?」
「わかった。この世界の戦争が終わった先、世界は人間達のものになる。
確かにワシやお前なら、100%犯人を間違うことはない。
だが、人間には100%はない。
冤罪で死なせてしまう可能性も0ではないからだ」
「それを言い出したら、刑務所に入れた時点で、まずいことに変わりはありませんよ。
無期懲役なら、無罪の人間を一生いれることになります。
そして、もう一つ、死刑制度は、犯罪を抑止するためのものでもあります。
それを、どう説明しますか?」
「お前は、何の反省もしてない奴を、ただ、死刑にすることが、解決策になると思うか?」
「立場によりますよ。
犯人を、死刑にすることで、犯罪が減るなら、いいと思いますよ。
それに、科学捜査はあなたが思ってる以上に、発展しています。
先入観をもって、自白の強要をしない限り、冤罪は、そう簡単におきませんよ」
アッシュールは笑みを浮かべて
「お前もわかってるんじゃないか。
それが、答えだよ。
手柄を立てることだけを、考えてる刑事、即ち、出世のことしか頭にない刑事は、ちゃんと調べるとはいいきれない。
被疑者を逮捕することが、点数となって出世に繋がる。
これが、刑事の冷静な判断を失わせる。
だから、冤罪が起こるんだ。
それと、前科があるというだけで、犯人だと疑われる世の中だ。
もし、はめられただけなら、先入観だけで、証拠が一致したということで犯人にされかねない。
それが、科学捜査の大きな欠点だ。
だからこそ、死刑制度を廃止すべきなんだ。
お前だって本当は、わかってるんじゃないのか?」
レインは笑みを浮かべた。
「ええ、あなたの言うことは正論ですよ。
でも、被害者遺族は納得しないでしょうね。
ま、死刑制度は一種の復讐殺人というあなたの考えはわかりますけどね。
そして、犯罪者とはいえ、手を下さなければならない人達がいる、それが、死刑制度だとあなたが、考えてるのもわかりますよ。
しかし、正論だけでこの問題は解決できません。
人の憎しみはそんなに、簡単に解決できるほど、甘いものじゃないですからね。
娘が強姦されて殺されて、
あなたは、許せるんですか?」
「お前ならそう言うと思ったよ。
お前が、変わったのもクラリスが、殺されてからだったな」
今でも忘れられない嫌な思い出だ。
無惨な妹であるクラリスの遺体を目にした時の怒りは、レインを暴走させた。
帝神族宰相率いる敵を、レイン一人で壊滅させた。
クラリスを殺した男こそが、実は帝神族宰相だった。
そして、この宰相が、エンリルに女遊びを教えた張本人だった。
そういう因縁があるのだ。
そう、憎しみは憎しみを呼び、そこには虚しさしかない。
人を殺して、復讐すれば、次の殺人が起こる。
復讐の連鎖にしかならないのだ。
そう、例え死刑になったとしても、問題は解決しない。
被害者遺族にとっては、終らないのだ。
死刑になったところで。
だが、生きてるだけで許せない。
そういう感情が、あるのも事実だ。
それが、罪というものだ。
その中で自分の死を前にして、アッシュールは決断した。
死刑制度を廃止して、死ぬまで刑務所に入れて苦しませてから死んでもらうという決断を。
レインとアッシュールは目をはずさず、睨みあった後、レインはアッシュールを立てた。
「今回は、冥土の土産にあなたを立ててあげますよ。
ただし、すぐひっくり返されるでしょうけどね」
「ワシが、そんなことわからないと思うか?」
「いえ、一応、言ったまでです。
私も、死刑制度廃止には反対なので。
しかし、最後のわがままくらい束の間の夢として、見せてあげますよ。
それが、親孝行です」
これが、二人の最後の会話になった。
レインが出て行った後
「レインの心を救う方法が、ないものか・・・・・・」
アッシュールは目を瞑った。