栗田は、拳銃を恵里のおでこに突きつけてきた。

「さて、早速質問させてもらおう。」

恵里の表情を見ながら

「お前が、組織を潰したいのは何故だ?」

恵里は、ためらわずに答えた。

「それは、誰もが笑える日本にしたいから。

だから私は、現代の坂本龍馬になりたいって思った。」

ちょっと興味を示したように、

「ほう。現代の坂本龍馬か。

だが、坂本龍馬は自分の志をなす前に死んだ。

それは、先の事を考えすぎるあまり目の前の危険を理解していなかったからだ。

そう、今のお前のようにな。

お前には、夫と三人の子供もいて内科部長としての地位もある。

なのに、お前は自分の命をかえりみないから結果的に今の状態になってる。

そう、お前が死ぬという事は大事な家族が悲しむという事をお前はちゃんと理解しているか?」

恵里は、不思議な気分になったが答えた。

「ええ、誰よりも理解してるわ。

でも、だからこそやる必要があると思った。

何故なら命どぅ宝、沖縄の言葉だけど、命が何よりも大事って意味。

だけど、自分だけがいいという考え方じゃ皆が不幸になる。

こうしてる間にも、組織によってかけがえのない命が消えていってる。

世界中でね。

だから私が、やろうと思った。」

栗田は、言った。

「最後の質問だ。

組織を潰した後に、どう変えるつもりだ?

お前が、トップに立って変えるか?」

恵里は、ためらわずに答えた。

「それは、私は政治家には向いてないから政治家にはならない。

だけど、政治家を裏で動かす事はできる。

私は、そうやって文字通り世界を一つにして皆を幸せにしてみせる。」

栗田は、この言葉に銃口を下げた。

「だそうです。アレクサンダー教授。」

恵里は、驚愕した。

そこには、死刑になったはずのアレクサンダー教授の姿があった。

「恵里ちゃん久しぶりだね。」

恵里は、茫然としながら

「どうして・・・?」

アレクサンダー教授は、笑顔で答えた。

「簡単な話だよ。

私が、捕まってみせたのはただのパフォーマンスだ。

真の黒幕を、潰すためのな。

恵里ちゃん、ごめんな。

敵を欺くためには、味方から欺く必要がある。

それと、今回の栗田君の件は君がどれだけ今、危険な事に関わっているのかを改めて理解してもらおうと思ってね。

だから、あえて栗田君に手荒な真似をしてもらったというわけだ。

もし、栗田君が組織の一員だったら君はとっくに殺されてるという事をな。

この世界で、戦うにはどんなに信頼できる相手でも疑ってかかるくらいの事を考えなくてはならない。

恵里ちゃん、まさに君は先の事を考えすぎて今を見ていない状態だ。

だから、どんな相手でも気を許してはならない。

虎穴に入らずんば虎子を得ず、のような気持ちで君が組織と戦ってきたのは知ってる。

だが、偶然にも君を守るために潜入捜査官が動いてくれてたからこそ、今の君の命があるのだという事を覚えておくといい。」

教授は、手枷をはずして、泣いてる恵里を抱きしめた。

「すまんな恵里ちゃん。

怖かったな。」

教授は恵里の頭を撫でながら、暫くそうしていた。

恵里が、泣き止んだのを見て

教授は、話し始めた。

「結論から言おう。

組織の黒幕は・・・。」

長い教授との話しが終わり、教授の残りの課題にとりかかった。

ただし、課題は三つありその課題は教授ではなく滝沢竜一が作ったものなのだ。

だから、その課題は解き明かされていないのだ。

正確に言えば教授が、あまりに今まで忙しすぎて考える暇がなかったからであるとも言える。

恵里には、これからは頼もしいボディガードもつくことになった。

ただし、栗田が動いたら敵にバレバレなので栗田が育て上げた一流の捜査官がつくことになった。

狙撃の腕・格闘術、どれをとっても特Aクラスの実力の持ち主である。

第二の課題は・・・。