その頃文也は、教授というのは肩書きだけであるというのを思い知らされていた。

国原信二は、恐るべき男だった。

父である国原誠の命令を、着実に文也にやらせた。

文也は、国原の恐しさを感じていた。

この病院、特に消化器外科はVIP専用の病院になっていた。

逆らえば、命そのもの、特に家族が人質状態なのだ。

つまり、家族が殺されかねない、それが国原が牛耳る病院だった。

そんな時、意外な人物がVIPとして運ばれてきた。

それは、経済担当大臣の高橋龍馬であった。

彼は、大規模な経済政策を行い、景気を上向きにすることに成功していた。

だからこそ、医療にお金をつぎ込む事ができるのだ。

たくさんの患者が、病院にやってきてどこの病院も潤っていた。

本来なら、患者が多ければ多いほど赤字に救命ではなるのだが、他の科では患者が多ければ多いほど利益になるしくみを高橋は、作り出し、救命にその分お金がいくしくみにしたのだ。

まさに医療の世界の救世主だった。

その人物が、よりにもよってVIP専用病院にやってきたのだ。

担当医は、文也自らついた。

そして、そんな時またしても驚愕することが起こった。

それは、マスコミ・病院・政治家に差出人不明の封書が届けられた。

それは、政治家達や病院関係者に届けられ、国中が騒ぎとなっていた。

当然、法正病院の国原が牛耳る問題も国中に明らかにされた。

どこも対応には、苦慮していた。

そして、それはアメリカ・イギリスの政治家達や病院にまで送られた。

それが、一通目の封書だった。

それから、三日後、またしても封書が届いた。

この封書には、橘・宮川二人に関わる者達への封書だった。

そして、アメリカの国務長官・イギリスの首相も含めた封書が送られてきた。

国原は、

「誰だか知らないが、やってくれるな。

まさか、日本だけでなくアメリカ・イギリスにまで送りつけるとはな。

これは、ニール大統領にも相談する必要があるな。」

だが、国原の屋敷にFBIが乗り込んできて逮捕した。

そして、三通目は、橘・宮川宛の封書だった。

絶対的権力をもつ二人が、日本警察によって逮捕された。

そして、アメリカ副大統領・国務長官、イギリスの首相逮捕・そして、CIA長官も逮捕され、世界中で大騒ぎとなった。

その頃恵里は、ある人物に会いに行っていた。

「お久しぶりですね。石神国務大臣。」

石神は、恵里を見て驚愕の表情を見せた。

「何故、私が生きてるとわかった。」

恵里は、ニヤリとして「新井教授の日記に書かれてました。

組織を潰す、切り札はあなたであると。

そんなあなたが、死ぬわけありませんよ。

そうあなたは、和田次長が、組織に送り込んだエージェントですね。

つまり、あの時死んだのは組織の人間を身代わりにしたんでしょう。

違いますか?」

石神は、笑いながら言った。

「見事だ。組織に潜入して30年になる。

そして、ようやく黒幕にまでたどり着いたんだ。

君には、もう誰が黒幕なのかわかっているのかな?」

恵里も笑いながら

「推測に、すぎませんけどね。

恐らくアメリカの、ニール大統領ですよね?」

石神は、拍手した。

「ブラボー!見事な推理だ。

だが、ニール大統領はナンバー2だ。

それより上が、日本にいるんだ。」

恵里は、驚愕して聞いた?

「日本にですか?」

険しい表情で言った。

「そうだ。黒幕は・・・。」

恵里は、完全に驚愕した。

誰もこいつが、黒幕であるとは思わないだろう。

あまりに、意外すぎて信じられなかった。

だが、黒幕ほど目立たない場所にいるものなのかもしれない。

「上村君、拳銃だ。君もアメリカで練習したことがあるんだろう。

これから、ボスのところに行こう。

護身用に、君に持っててもらおう。

残念ながら、奴が黒幕である証拠はないからな。

あとこれは 盗聴器だ。

君は、これで聞いててくれ。

私に、何かあった場合、その 盗聴内容をメディアに流せ、それで奴を逮捕できる。

そして、ついに石神と恵里は勝負に出た。

そして、新宿の小さな居酒屋に石神は、入って行った。

「ご無沙汰しております。

谷原龍一さん。」

組織の黒幕は、国原の秘書である谷原の父親だったのだ。

谷原は、憂鬱な表情で

「何のようだ。ゼロ」

ゼロ、それが石神のコードネームなのだろう。

「橘も宮川も、逮捕されました。

となると当然、組織のボスであるあなたが次に逮捕されることになります。

もちろん、ナンバー2であるデスもね。

アメリカ副大統領が、逮捕されたわけですから。」

谷原は、

「まさか、お前が警察のイヌだったとはな。

お前には、死んでもらう。」
だが、そこに内閣調査室の一級捜査官が乗り込み一気に逮捕した。

これは、和田次長と密かにコンタクトをとり、この盗聴の内容を聞かせることで一気に逮捕する作戦だった。

そして、ついに組織の全てが明らかになったのだった。