恵里は、学長殺しの真犯人に会いにいった。

犯人の名前は、二岡祐介と言った。

「どうして私を呼んだの?」

二岡は、ニヤリとしながら

「そうだな。しいて言うなら、女だてらに一目おいてるからだな。」

恵里の表情を確かめながら、二岡は間をおいて

「それと、もっとも愚かな女だからだ。」

二岡を睨み付けて

「愚かな女・・・!」

「その通りだ。

小野田が、どういう奴かわかっているはずだ。

にも関わらず、お前さんはこの事件に首を突っ込んだ。

小野田の依頼でな。

この事件の、本当の裏をお前さんはわかってないということだ。

厚生労働大臣の四宮は、小野田の使いっぱしりということさ。

かといって今回の学長殺しに関しては関わっていないから、奴はお前を利用することで自分の名声に利用したのさ。

看護大学の首席で、看護大学の誰からも慕われる女の子に指示を出して事件を解決させたってな。

自分の立場と、いうものを理解してから行動するんだな。

じゃなきゃ、利用されて終わるぞ。

これは忠告だ。」

間をおいて

「さて、本題に入ろうか。
いいかよく聞け。

これは、お前の命に関わることだ。

俺に、学長殺しを依頼したのは、文部科学省の事務次官だ。

奴は、裏世界ともつながってる。

学長殺しの理由は、事務次官の不正を明らかにしようとしたからだ。

施設の件の黒幕は、事務次官だということさ。

警察庁刑事局長の和田さんに、今のことを直接話せ。

俺は、お前の命を守るために黙秘を続ける。

俺が、話せば真っ先にお前が殺されるからな。

警察の中にも奴の息のかかった奴は、いくらでもいる。

警察官であろうと信用するな。

事務次官の指示である決定的な証拠は、コインロッカーにある。

お前一人で動くこと、いいな。

お前が、証拠を取りに行くのは期間をおいてからにすること。

すぐ動けば、疑われるからな。

お前にも、おそらく裏世界の監視がつく、警察からもな。

聞かれても、何も知らないと突っぱねること。

いいな?」

恵里に、恐怖の顔が浮かんだが「わかった。必ず事務次官を失脚させてみせる。」

「ああ、約束だ。あと携帯は、盗聴されるからこの一件に関しては使うな。」

恵里が、出ていったあと「あいつなら信用できる。頼むぞ。」

そして、二岡は黙秘を続けて、恵里には、刑事が何を話したのか聞きにきた。

恵里は、こう答えた。

「看護大学の、学生に関する愚痴を聞かされただけです。

まったく、何で私がそんな話しを聞かされなきゃいけないんでしょうね。」

ほとほと呆れ果てる、という芝居をやってみせたのだ。

刑事達も、すぐ信用した、それは看護大学の誰からも慕われる人間で、何人もの学生の自殺を阻止したことと、警視庁捜査一課の警部が人に嘘をつける人間ではないということを一課長に進言したためでもあった。

それに、相手は21才である。

だから、重要視しなかった。

犯人が、21才の小娘に事件のことを話すわけがないという判断だった。

裏世界も、同感だった。

恵里は、ほとぼりの覚めたのを狙って美紀の父に連絡を取り、刑事局長に直接会うことができた。

刑事局長の和田は、言った。

「二岡らしいやり方だな。

君のような女の子に、こんな重要なことを任せるとはな。

だが、君がどれだけ優秀なのかはよくわかりましたよ。

後は、私に任せなさい。」

警察庁は、見事に事務次官を確保に成功した。

これは、警察庁が極秘に捜査して逮捕に成功したということにしたのだ。

手柄は、全て刑事局長が手にした。

もちろん和田の本音を言えば、恵里を表彰したかったのだが、それでは恵里の命が危険にさらされることになるため自分の手柄にする必要があったのだ。

恵里は、その知らせを聞いてホット一息ついた。

井原は、確信していた。

恵里が、二岡から話しを聞いて刑事局長に直接話しをしたのだと。

恵里の命を守るには、これ以外手はなかったということまで。

そして小野田もまた、警察庁の出方に、疑問をもっていた。

そして、小野田は自分の病院に看護大学の学生を研修に来させることにしたのだ。

恵里は、内科を希望し内科に研修に行くことに成功した。

小野田も響子も久美子も恵里が、内科の研修を選んだことに驚いた。

相手は、他学校の生徒であるためさすがの小野田にも強制はできなかったのだ。

恵里は、あの事件以来あらゆることが怖くなっていた。

特に小野田の存在は、怖かった。

自分のことを、利用して名声に利用する。

そんなことに、自分は関わりたくない。

ただ看護婦に、なりたいだけなのに、悪い奴が許せないそれだけのことなのに・・・。

美紀あなたならどうするの?

自分が、そんなどうでもいいようなことに利用されるなんて。

恵里は、何もかもがわからなくなってしまったのだ。

そこに、美紀の兄である俊介が現れた。