美紀は、すぐに病院に運ばれた。

そして、美紀の病名がでた。

美紀の病気は、胃癌だった。

この病院は、外科の権威で国谷の二番弟子の高村がオペをすることになった。

本当は、国代にやってもらいたかったのだが国代は、フランスの政界の大物の手術をするためにフランスに行っていたのだった。

高村は、「古波蔵君、君に私の助手をしてもらう。」と言った。

美紀の精神状態を考えれば、無二の親友で心の底から恵里を尊敬してるという判断で決めたのだ。

目を覚ました美紀に、恵里は言った。

「美紀、落ち着いて聞いてほしいの。」

美紀は言った。

「何言われても、驚かないから言って。恵里。」

「あなたの病名は、胃癌なの。

でも高村先生という外科の権威が、オペしてくれるから大丈夫。」

「恵里にも、役割あるんでしょ。

そうじゃなかったら、恵里が告知なんてしないよね。」

「うん。私が、助手をつとめるよ。」

「良かった。恵里が、助手で。

万一私が、助からなくても恵里が助手という形で関わってくれるだけで私は救われるよ。

恵里、万一私が助からなかった時のために言っとくね。あなたには医者になってもらいたいの。
そして、私の分まで多くの患者を救ってほしいんだ。

私は、心から恵里の優しさや皆が慕うような強さ・そして、人の事を何よりも考えているところとか、私は心から尊敬してるんだ。

自分の本心を、ここまで話せる人というのもいなかったしね。

でも私は、同時に心配になる。

恵里は、いつかあらゆることがたまりにたまって爆発しちゃうんじゃないかって。

だから、自分のことも考えてね。

それと例え私が、死んでも自分を決して責めないで。

私のことで恵里が、苦しんでると考えただけで私の方が、辛くなるってことを親友としてわかってね。」

恵里は、涙を流しながら

「美紀、そんなこと言わないでよ!

絶対に、あなたは助かる!
あなたは、それだけ考えて。

それにね。美紀がいなくなったら私の方が困るのよ!

美紀は、医療に関する私にとっての考えを180°変えてくれた人だから。

どこまでも、理想の医者を目指して走ってく姿にどれだけ私は、変わったかわからないよ。

美紀は、私の目標なんだからね。

ちゃんとそれを、わかってほしいよ。

それに私は、美紀が思っているほど強くない。

私、今まで目標とする人とかそういう人っていなかったから、だから私は美紀のような人に会えて本当に嬉しかったんだ。」

「私もだよ。恵里。あなたに会えて良かった。」

二人そろって、涙を流しながら語った。

手術は、一週間後に決まった。

美紀の見舞いに家族もやってきた。

美紀の家族は、父・母・兄の三人である。

美紀の父は、厚生労働省の課長で、最年少で課長になるほど優秀な人間で、厚生労働省では下からは慕われていた。

だが上には、敵が多かった。

政界とのつながりを重視するため、賄賂を政界に渡し地位を確立させたメンバーだからだ。

美紀の母は、大学病院で助教授をやっていた。

美紀の兄は、天才外科医として有名な人物だったのだが、だが事故で二度と手術ができない体になってしまったのだった。

美紀とは、本当に仲の良い兄妹だった。

彼の名前は、真田俊介といって医大で教師をやっていた。

美紀とは十も年が、離れていた。

だからその分美紀は、可愛がられたのだ。

俊介は、恵里に話しかけてきた。

「あなたが、古波蔵恵里さんですね。

妹からの手紙で、君のことは聞かされてます。

妹を、明るくて強い娘にしてくれてありがとうございます。

私が事故を、起こしてから妹から笑顔が消えました。

誰よりも尊敬する兄が、医者をできなくなってしまったことで、あの娘は私の分まで一流の医者になるつもりで頑張ってたんですよ。

そんなあいつが、胃癌だなんてな。

神も仏もないっていうのは、こういうことですよね。」

「本当に、そうですよね。
どうして、美紀がこんなめに会わなきゃいけないんでしょうね。」

「恵里さん、最初から言っておきます。

私は、元外科医ですからはっきり言っておきますよ。

癌に絶対はありません。

だから、手術が成功したと思っても突然患者が亡くなることもあれば、体力が持たなくて手術中に亡くなることもある。

開腹した途端、ドナーを見た限りじゃ転移が無くても転移が見つかる可能性はゼロじゃない。

だから、どんな結果になったとしてもあなたを責めるつもりはありませんから、あなたらしくやって下さい。」

俊介は、そう言ってくれたのだ。

恵里は、一週間美紀の精神的支えとして、いろいろなことを話した、美紀はこれから手術を受ける人間には見えないほど明るかった。

手術当日美紀は、言ったのだ。

「恵里、これ私の宝物なんだ。

恵里に持っててほしいんだ。」

美紀は、兄である俊介からもらった美紀の宝物であるきれいな水晶を恵里に渡した。

そして、ついにオペが始まったのだ。

開腹してみると、予想以上に酷い状況だった。

高村は、どんなことがあろうと救いたかった。

自分の腕なら救える、高村はそう思った。

高村は、オペを続行したのだ。

恵里も救いたかった。

手術は、完璧だった。

だが、美紀の体力がもたなかったのだ。

恵里は、もしアレクサンダー教授や国谷先生なら美紀を必ず救うことができたと今でも恵里は思っていた。

恵里は美紀の死を受け入れることができず、葬式やおつやにも行かなかった。

恵里は荒れた。

自分に、美紀を救う実力があれば美紀は死なずにすんだんだと自分を責めて・責めて、人がいないところにきてしまったのだ。

そこに、ナイフを持った男が恵里に襲いかかってきた。