上方落語特選競演会 | ひでの天声時評(甘辛ブログ)

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令和2年1月13日、『上方落語特選競演会』に行ってきた。

特選と銘打たれたのは落語だけでなく講談や浪花節もあるからである。

開口一番は笑福亭喬介の『犬の眼』。お馴染みの前座噺、喬介の若手らしい一席といったところ。

 

二番手は桂吉弥。上方落語の冬のネタ、『河豚鍋』(ふぐなべ)である。寒いこの季節に鍋はいい。ふさわしい演目であったと思われる。吉弥も充分に冬の風情を醸し出し好演といっていいだろう。

 

中入り前は旭堂南龍の講談。『山之内一豊の妻』から、流鏑馬の抜き読み。好感の持てる熱演であった。場内からも万来の拍手が湧きあがった。

 

休憩中入りの後は紅一点、菊池まどかの『嫁ぐ日』、浪花節である。

新作ながら美声の節回し、演歌を聞いている面持ちであった。しかし、しょせん浪曲は浪曲である。というのも情が勝ち過ぎてイマイチの感は拭えないのである。曲師の三味線も、浪曲の程度といったところ。同じ三味線でも歌舞伎や文楽の一線を画すもの。これはいかしがたがないか。

 

トリは、四代目桂小文枝の『悋気の独楽』である。

四代目小文枝は桂きん枝としてながらく活躍してきた。この、きん枝、名としては40年以上だという。

昨年の三月に師匠の名を襲名して四代目となったという。三代目は上方落語の四天王と云われた人。その名を継ぐのは躊躇もあったという話しをマクラでしていた。兄弟子はいわずと知れた六代桂文枝である。あの「いらっしゃーいい」でお馴染みの桂三枝である。

 

さて四代目桂小文枝の『悋気の独楽』、独楽を回す丁稚に妙味はあったが、他の人物に特に特徴はなかったように思われる。特に番頭さんにはもう少し番頭らしい重みでもあったほうがよかったかもと思う。また御陵んさんにもうすこし女らしさも・・・・・・・・。

 

しかし全体としては楽しめるいちにちであった。

 

教育互助会の主催であるがゆえ、教育関係者は無料で入場できる。これがなによりありがたい。

 

数年前に観た同じ会の、桂米団治。この『掛取り』が冬の演目にふさわしく大晦日の掛取りの様子が歌舞伎さながらに鮮やかな彩(いろどり)をもって演じられたのが今でも忘れられない。