何も無い。
そんな事は解っている筈なのに、しかし、鏡の中には世間の雰囲気に充てられて日常よりも浮き足たっている自分がいた。
『今日、という日』
街中がイルミネーションに包まれる12月。ライトが点灯開始したかと思えば、日付は12月24日になっていた。
彼氏のいない自分にとっては、あるのは仕事だけだ。
「よりによって休日出勤」
独り言ちた言葉はぽとりとキーボードの上に落ちた。
よりによってクリスマスイブが土曜日。更に休日出勤にもなれば独り言の一つや二つ大音量で吐き出したくもなる。
至って普通の一日な筈なのにどうも気持ちのダメージが大き過ぎる。
だからクリスマスは苦手だ。
普通に仕事をして一人一日を過ごしているだけなのに、クリスマスと言うだけで哀れみや同情を受けなければいけない。まるで一人で過ごす事が大罪の様に人々は家族と、友人と、恋人と、大切な人とともに時間を過ごす。
ほっといてくれと言う話だ。
たかだか12月24日、と言う日をどうゆう風に迎えようとも其れは個人の自由。
そう言い聞かせるようにキーボードを荒々しく叩く。
何よりも辟易とさせるのは、其れでも、そうは思っても、自分が12月24日を少しでも意識している事だ。
何も無い。
そうは思ってもやはり特別な、意味のある日として頭の中にある事がクリスマスを苦手とする最たる理由だ。
「帰ろ」
集中出来ずに仕事を切り上げる。どうせまた明日も同じ様に出勤。
そうしてただただと、付加的に意味を持たされた日付という数字を無意味に経過していく。
いつも少しの期待して、けれど其れはちっとも実現する事なく。
「寒っ」
「本当に、寒いね」
ビルのエントランスに出た瞬間の冷気に驚いて漏れた独り言に返事があった事に更に驚いた。
振り向くと隣のエレベーターから出てきたばっかりの、5階の会社の人。
同じビルの中にいる他社の人、時々エントランスで鉢合わせしたら挨拶をする、ちょっと気になる人。
こちらの驚いた顔に柔らかい笑顔でお疲れ様、と言葉をくれた。
「お互いクリスマスなのに仕事なんてついてないね」
いつもは挨拶だけで終わる会話が続いている。
今日が特別な日だからだ。
「そうですね」
相槌をつくだけて終わる。私には特別など関係ないけれど目の前の彼は今からクリスマスが始まるのかと思うと寂しいからだ。
「今からデート、ですか?」
投げかけられた思わぬ質問にどもりながらもいいえと小さく返した。
「そんな相手いませんから」
今度はあっちが驚いたような顔をしたので、不思議そうに相手を見ているとすいませんと口早に告げられた。
「いや、意外だったから…あ、あのもしよろしければ食事にでも行きませんか」
今日という日が特別な日だから、特別な事が生まれる。
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微妙…
なんかもうちょっと違う
妄想だったんだけどなぁ
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