急に鈍器で殴られた様な衝撃をうけたのはヒロと付き合って2ヶ月が経とうとしていた時だ。
『普通じゃいられない』
「え?」
「だからー、お前らちゃんと付き合ってんの?」
鈍器を振り落とした張本人であるへーとはずずっと抹茶ラテを啜って、もう一度同じ様に同じ箇所に鈍器を振り落とす。
構内を歩いていたら偶然ばったり会ったへーとにカフェラテでも飲まないかと誘われて、何故カフェラテ限定なのかわからなかったが本当に本当に暇だったのでいーよと返事をして二人でカフェに行った。
結局新商品の抹茶ラテをへーとが頼み、私はゆず茶を頼んだのでカフェラテは誰も飲まなかったのだが、そう言えばと抹茶ラテに口つけながら言ったへーとの言葉に私は全ての動作を止めてしまった。
いや、なんかさー、俺、ヒロとは高校から一緒じゃん?一緒なんだよ。でな、高校の時のヒロも知ってる訳でさ。なんかー、違うなぁって思って。何がって、んー、なんかヒロの感じ?どんなって…そう言われたら困るけど、今まではもうちょいなんつうか彼女と普通に付き合ってたと思うんだよ。普通、って言ったら普通だよ。お前とはなんかちょっと違う。ぎこちないっていうかさぁ。うーん。何なんだろ?
結局質問に質問で返される事になった。馬鹿へーとの拙い言葉に横殴りにされたのは大変遺憾な事だけど、其れよりもヒロと自分が他者から見たら意外にも歪な関係に見えていたとは驚いた。
私は、驚いた。
だって、微塵もそんな事は感じずラブラブ!だと思っていたからだ。私は。
じゃあヒロは?
結局鈍器で殴られた私は講義に出られないほど負傷し、何度もその傷を反芻させる。
違う?何が?
違和感のある関係?
他者から見て?
其れともヒロにとって?
普通じゃない?
ぎこちない?
其れは、好かれてないって事?
痛い。
傷はかなりの深さだ。
その傷を背負ったままバイトへ向かう。気乗りはし無いが、私情でバイト先に迷惑をかける訳にもいかないし、家にいても滅入るばかりだから出勤する。
「うわっ、暗っ!」
スタッフルームでバイト仲間のゆうが叫んだ。冗談も何も返せない私にゆうがすぐ様どした?と心配そうに聞いてくる。テンションの切り替えは一級品。繊細な彼は人の心の機微を感じ取り、優しく包み込む事に長けている。
何も答えられないでいる私の頭をくしゃりと撫で、優しく笑った。
とりあえずバイト着に着替えて、店長には調子悪いって言ってカウンターの中に入れて貰うな、無理せずちょっとずつ食器磨いてたら良いよ。
ゆうの機転の早さに感謝しかない。店長にも大丈夫?と心配されて、情けなさで一杯だけど思う様に身体が、心が動いてくれない。
幸いにも今日はお客さんが少ないみたいで無理に笑顔を貼り付けっぱなしにする事は無かった。
「どした?」
カウンターに二人並んでグラスを磨きあげる。自分の気持ちとは裏腹に、店内にはトム・ウェイツのシャウトが響き渡る。
その音の中で身長180cmのゆうからの声は上から降ってくる様に聴こえた。低くて柔らかな声。
どうしようも無い気持ちになって、今日の事を全てをぽつりぽつりと話し始める。ゆうは時折相槌をうって、聞いてくれた。
最後まで話すと、そうかぁ、と言って携帯を取り出した。勤務中だぞ、と言うツッコミを入れる気にもならない私はただただその動作をみてるだけだった。
「ちょっと待ってて」
何を待つのかよくわからないまま、頷いた。
「よーぅー!」
店内に響き渡る元気な声。独特のハスキーボイスでジュンちゃんだとすぐにわかった。
「どしたよ、ゆう?」
カウンターに座るじゅんちゃんにゆうは笑ってオレンジジュースを差し出す。
「じゅんの恋愛お悩み相談室」
ゆうはゆっくりと私の方を振り向く。待っていたのはじゅんちゃんだったのか。
ゆうと同じ音楽大学に通うじゅんちゃんは度々此処にやって来てはオレンジジュースを飲んでいく。度々来るものだから仲良くなって気づいた事は、じゅんちゃんとヒロは小さい頃から一緒にいた幼馴染だと言う事だ。
此処で、じゅんちゃんにも、ヒロと私の関係が歪だと言われたら、どうしよう。
不安が顔を覆い尽くしたのだろう、大丈夫だよと言いながら肩に手をおかれた。何故だかゆうはすごく自信満々にそんな事を言う。
私はおずおずとじゅんちゃんにもきょうの事を話した。ほーとかうーとかあーとか変な奇声の相槌を返してくれながら聞いてくれたじゅんちゃんは聞き終わると直ぐに、笑った。
うきゃんうきゃんと、独特な笑い声が店内に響き渡る。
「ヒロは大好き過ぎるとヘタレちゃうんだよ」
ヒロにはお姉ちゃんいるから女の子の扱いとか上手い方だし、基本的に女の子の前だとカッコつけたがるとこあるんだよね。でも、本当に好きな子だと上手くできないのがヒロでさ。照れちゃってできないみたい。今まで付き合った子って多分言われて付き合ってたと思うし。だから失礼かもしれ無いけど上手に付き合えたんじゃない?僕、ヒロが自分から告白したって聞いた時びっくりしたぐらいだよ。で、まだ2ヶ月がぐらいでしょ?照れちゃって仕方ないんじゃない?大好きで特別だから普通じゃいられないんだと僕は思うよ。
じゅんちゃんの言葉に傷が癒されていくのがわかった。
隣に立つゆうは、お前が想われて無いなんてありえないぐらいこの間見たヒロの眼差しは優しかったと言っていた。だから自信満々で、そしてヒロを良く知るじゅんちゃんを直ぐに呼んでくれたらしい。
「ありがと」
二人にお礼を言うと、二人は優しく笑ってくれた。
「前のお前じゃ考えられなかったけど、人の言葉に揺らぐぐらい好きなんだな」
「それぐらい特別、なんだねー」
そう言えば、自分は人の言葉に振り回される様なタイプでは無かったにも関わらずこんなにまで傷を受け、そして癒されたりもする。本当にヒロの事になると余裕なく揺さぶられてしまう。
それぐらい特別なのだ。
それぐらい、好きなのだ。
「それにしてもへーとのやつ、ただじゃおかない」
「あー、あいつヒロの親友は自分だとか思ってるかもしれ無いけどヒロと僕の方が断然仲良いからな!」
「ねっ、本当出しゃばり過ぎだよね。ヒロヒロ!ってすぐ付き纏ってくるし」
「ヒロの事なら何でも知ってるって顔してるけどまだまだだからねっ、今回だってそうだし」
「そうだそうだー!」
「すごい言われ様だね…」
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うーん、なんか違うなぁ
ヒロ出てこんかった…
うがー!
妄想はんぱない!
早く彼氏欲しい!