ふと空を見上げると季節がゆっくりと変わっていた事に気づいた。

やけに空気は澄み切って、冷たい。





『冬の始まり』







「痛っ」

いきなり額に衝撃を受けた。
何事かと思えば、光先輩のデコピンを食らったみたいだ。

「イタイのはお前だ」

道の真ん中でアホ面で上見上げてるお前がイタ過ぎて止めてやったぞ、と感謝をしろと言わんばかりの光先輩に、力強すぎだし他に方法あるっしょ、という言葉を飲み込んだ自分を褒めた。(へーとだったら絶対言って更に痛いめみる)(あっほだから)

「何してんだよ?」

「いや、空をみて」

「みて?」

「季節が変わるな、と」

「…」

「…」

意味わかんねーし本当にイタいな、っという感情を隠しもせずに表情と視線で雄弁に語る光先輩に返す言葉の一つも見つからない。

「…ま、いーわ。お前の奇行は今に始まったわけじゃ無いし。
それより、今週末空けとけよ。集合」

どーせ予定無いだろうし、と余計な一言を添えて拒否権も持たせて貰えずに光先輩はさっさと去って行った。

嵐の様に去って行った光先輩の後ろ姿を見送った後、また空を見上げる。

季節は、流れる様に変わっている。







光先輩に言われた通りに空けた週末は自分の誕生日だったが話題にもあがらず、ただ寒くなってきたからあったかい鍋でもやりたいという光先輩の思いつきで開かれた鍋会を伊藤さん家でいつものメンバーでやるだけだった。

「いきなり何をいいだすかと思えば、ねぇ?」

伊藤さんと二人、台所に並んで鍋の準備をする。伊藤さんは豆腐を切りながら呆れた様に話す。

「まぁ、いつもの事ですね」

そう返す私に伊藤さんは優しい顔して笑った。

「良かったの?」

「何がですか?」

伊藤さんはやけに優しい顔して笑っただけで、質問の答えを言葉にする事なく光先輩に呼ばれてリビングへと行った。

鍋会は思いのほか普通に美味しく楽しく過ぎて行った。(光先輩の事だから闇鍋、とか言って変なの入れると思ってた)
お酒も飲んでみんな良い感じに酔ってきだした。いつもの飲みと何ら変わりのない中、一つだけ違う事があった。

「ちょ、ヒロどしたよ?」

いつもはお酒を飲もうとしないヒロが、今日は自らすすんで生ビールを飲んでいる。初めはみんな驚いてたが、光先輩の飲みたい奴には死ぬまで飲ませろ、の言葉に押し黙って鍋会がすすんだ。序盤はチビチビと飲んでた為に、特に皆気にする事なく鍋会がすすんだが時間が経つに連れて真っ赤な顔して其れでも飲み続けるヒロに流石に心配になってへーとが堪らず声をかけた。

「んー?」

目が据わっている。
大分酔いが回ってるみたいだ。手元にはまだ一本目の缶がずっと握り締められているが、お酒に滅法弱いヒロにとっては偉業だ。
酔っているのは歴然だった。

「別に大丈夫だよな、ひろ!まだまだ飲む為にも酒買ってこい!」

光先輩の傍若無人な発言に顔が真っ赤なヒロがむっくりと立ち上がり、止めんなよという暴君の無言プレッシャーをかけられた皆が心配そうに見つめる中よたよたと玄関へ向かう。

「私、一緒に行ってきます」

隣の伊藤さんにそう言えば、いってらっしゃい、とやけに綺麗に笑った。

「ジャケット無いと寒いよ」

「あ、りがと」

玄関先でジャケットを渡してそれから二人でアパートをでた。
夜だと寒さが増して、季節が足早に変わっているのがより一層感じられる。

「ちょ、来て」

いきなり手を取られたかと思うとぐいぐいと引っ張られて目的のコンビニとは反対の方に歩いて行くひろ。
何?と問うても返答は無く、黙々とすすんで行くばかり。

小さな森みたいなところを登って行く時に、ひろが口を開いた。

「最近さぁ、やけに空みてるよね」

「えっ、あ、うん」

「…俺も、よく見る」

知ってる。

二人で見上げたあの夏の終わりの花火舞う空から、季節が変わるのを感じていた。また二人で見上げる事ができればと、願いを込めて空を見上げる。
自然と探してしまう細っそりとしたシルエットが自分と同じ様に空を見上げているのを見ると、期待が止まらない。

あの夏の終わりに聞いた言葉の、その先を期待して仕方が無い。

其れでも臆病な自分は今の関係を崩す事を恐れては、今の関係に満足いってる振りをする。
空をみては、あの夏の終わりは、あの花火舞う空は、あの繋がれた手は、あの夜空を見上げる横顔は、あの言葉は、本当に現実だったのかと反芻しては現実である事を願ってばかりだというのに。

「空見上げてみて」

言われて、森の少し開けた所、空を見上げる。

「わぁ…」

夜空一面に流れる、流星群。

間の抜けた感嘆のため息しか出ない光景を、ただただ見上げる。
冷たい空気は世界を凍て付かせてしまったのか、あたりはひっそりとして静けさだけが漂う。
引っ張られて繋がれた手だけが、熱を帯びていた。

「誕生日おめでと」

驚いてすぐさま隣を見るとひろと目が合った。

既視感。

こんな瞬間が前にもあった。
何度も反芻させたあの夏の終わり。
冬の始まり、流星群流れる夜空、繋がれた手、夜空を見上げる横顔、そして

「すきです。付き合ってください」

望み焦がれた言葉。
本当は欲しくて欲しくてしかなかった、確証。約束。関係性。

「私も、すきです」

もらえて、こんなにも待ち焦がれていた事を初めて知った。こんなにも満たされるなんて。こんなにも感情が溢れるなんて、全く想像もつかなかった。

「喜んで」



空を見上げると季節が変わっていた。
嬉しいサプライズプレゼントをもらえた誕生日。
冬の始まり。二人の始まり。







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うわーん!
スパショチケットとれない中で
ヒョクチェとの妄想が止まらなくて
切なさが倍増っ!

ダフ屋は嫌だ
定価で頼む
ただでさえ高いのに…
バンアパ3回見れるぞっ

あーもー
ひょくちぇぇぇぇえ!!!

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面白いのは此処からでさ、ヒロが緊張ほぐすために飲んでたお酒がさ、何かOK貰えて気を緩めた途端回り始めて気持ち悪くなってぇ~、帰って来た二人を誕生日おめでとうと交際スタートおめでとうとのサプライズて迎えたのにテンション低めで~、あれフラれたか?とか思ったけど違うくて寒い中結構長い事いたから二人とも翌日風邪ひいてたよねー!
誕生日翌日から彼氏と風邪ひいて寝込むって中々無いよね、てか無いよね、むしろ終わってるよね。

と、私たちの馴れ初めの話は伊藤さんの高笑いととともに笑い話として話されるネタになってしまった。