(92) 2019年 相模湾流 | ID Fishing

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潮の法則。潮を基準に釣りを組み立てます。Match the Current

さて、2019年 1年間の相模湾流についてみてみましょう。
 
まずは、黒潮のふるまいから。

2019年も黒潮大蛇行下の1年でした。北側ゲートの通過率は99%、南側ゲートのそれは1%でした。

2018年の北側ゲートは76%、南側ゲートは24%だったので、2019年は昨年比 北側ゲートの通過率は23%増加、南側ゲートのそれは23%低下でした。

黒潮大蛇行を形成する渦の位置が伊豆海嶺の西よりで安定していたことが、このような結果になった要因の一つだと思います。渦の位置が伊豆海嶺の西よりで安定すると、黒潮大蛇行はより長期化する傾向があるそうです。では、なぜ渦が伊豆海嶺の西よりで安定するのか・・・要因の一つに黒潮流量の低下があるそうですが、ここから先は研究者の領域なので研究結果を待つしかありません。

 

次はワジオとカシマジオの流入日数と率について。
         (積算)
ワジオ         78.1日     21%
カシマジオ     32.4日      9%
その他      108.8日     30%
無効データ    145.8日     40%

2019年は相模湾内の流れを観測している装置が5月に停止。9月には台風被害で故障し、それ以降観測データが更新されなくなりました。その結果、無効データが40%に達し、年間の60%しかデータがありません。

下記に示す2019年の結果は、すべて年間の60%分のデータを基にしたもです。

 

次は黒潮流路と相模湾流の関係について。

 

北側ゲートのワジオの流入率は35%でした。対して南側ゲートのワジオ流入率は67%。

今年は南側ゲートのワジオに照準を合わせて”各釣り物のお祭り”を狙ってましたが、南側ゲートへのゲートチェンジが少なかったので、狙いどおりにはなりませんでした。効率よく”お祭り”を狙える潮を見つけても、その潮が再現されなければ意味がありません。自然は2018年ほどのチャンスを、われわれ釣り人に与えてくれなかったということです。

 

次は潮回りごとにみる各潮の流入日数です。

ワジオは中潮と小潮まわりによく流入しました。カシマジオは大潮まわりと長潮が目立ちます。

レーダーチャートで示すと下記のようになります。

釣り竿の特徴を示したレーダーチャートではなく、基準値に対してワジオとカシマジオの流入率を示したものです。基準値とは各潮まわりの分布率です。
ワジオは大潮の流入率が基準値より少なく、小潮まわりが基準値より多く流入しました。Summer Currentの釣りで小潮まわりによく喰った理由は、このあたりにありそうです。
カシマジオは中潮の流入率が基準値より少なく、大潮まわりと長潮が基準値より多く流入しました。

 

次は、各曜日ごとにみる各潮の流入日数です。

ばらつき具合はワジオが17%でカシマジオは35%でした。潮まわりの1サイクルは14日(2週間)+1日の15日。2週間に1日づつ潮まわりがシフトすることが、ばらつき具合に影響します。

2週間に1日づつシフトする潮まわりに合わせて釣りへ行けば、行くたびに好釣果を叩きだせるわけですが、一般的な釣り人は土日が休みなので、潮まわりに合わせた釣行計画はたてられません。

Summer Currentの釣りで、この1日づつシフトする潮まわりに合わせて釣行している釣り人がいました。

毎回のように船宿のホームページの釣果欄に釣った写真が掲載されていたことは、言うまでもありません。

 

次は、時刻ごとの流入率をみてみましょう。

ワジオはサインカーブのような曲線を描きます。いわゆる朝まずめが山となり、夕まずめが谷となります。渡船や遊漁船での釣りには適した位相であるが、夕まずめからの夜釣りには適していない位相である。夕方からの夜釣りのときには位相を進めたいが、自然は釣り人の都合に合わせてくれないので、釣り人が工夫するしかなさそうである。

カシマジオは右肩あがりで19時~21時にピークがあり、その後低下していく傾向にあります。
ワジオとカシマジオともに非大蛇行下と同じ傾向です。

 

次は、ワジオとカシマジオが流入した潮まわりと時刻をみてみましょう。

ワジオの最多流入は小潮の2日目で流入率は27%でした。最小流入は大潮の2日目で流入率は10%。

AMの時間帯とPMの時間帯の流入比はAM : PM = 62 : 38でAMの時間帯の方が有意となりました。大蛇行下でもワジオを狙うなら午前がいいということです。

小潮は夕方の流入率がとくに高いです。これは南側ゲート通過時のワジオの特徴です。北側ゲートを通過しているように見えても、黒潮の接岸位置が東側へ寄っていたんだと思います。

 

カシマジオの最多流入は長潮で流入率は19%でした。最小流入は大潮後の中潮の1日目で流入率は4%。AMの時間帯とPMの時間帯の流入比はAM : PM = 36 : 64でPMの時間帯の方が有意となりました。大蛇行下でもカシマジオを狙うなら午後がいいということです。

 

大蛇行下でもAMのワジオ、PMのカシマジオという結果でした。大蛇行下でもシイラは午後が有意ということだと思います。

 

次は、流速を見てみましょう。観測ポイントは真鶴の三ツ石沖です。

ワジオのピークは0.3ノット~0.6ノットにピークがあり、流速が上がるにしたがい流入率が低下します。カシマジオは0~0.3ノットにピークがあり、流速が上がるにしたがい流入率が低下します。これも非大蛇行下と同じ傾向です。

 

次は月ごとのワジオとカシマジオの流入日数についてみてみましょう。

5月と9月~12月は観測装置が停止した月です。2月、3月、8月によくワジオが流入しました。

 

カシマジオはワジオと逆の傾向になります。ワジオの流入が少ないとき、カシマジオがよく流入します。ワジオとカシマジオは排他をとります。

 

最後に円グラフで各潮の流入率についてみてみます。

 

2019年は観測装置の停止日数が多かったので、データとしての信頼度は40%低下します。足元も観測装置は停止したままで、復旧は未定となっています。早く復旧してほしいです。

2017年9月から始まった黒潮大蛇行期間が2年経過しました。いつまで継続されるのか気になるところです。

黒潮というのは、とても罪深い海流だと思います。その位置ひとつで釣り人や漁業関係者を一喜一憂させます。接岸位置の南北によるメリット・デメリットはよく語られますが、接岸位置の東西にもメリット・デメリットがあるようです。接岸位置が西よりだと駿河湾、東よりだと相模湾が良くなるんじゃないかと・・・

2020年も黒潮は物理法則に則りその流路を変化させ、われわれ釣り人を翻弄することでしょう。どこまで自然に合わせられるかは釣り人の情熱しだいなんですかね。