独り芝居 | 時差2時間の空間

独り芝居

初恋ってどれがそうなんだろう・・・ってしばらく考えていたのだけど、私なりに勝手に定義してみて、じゃあ彼かな?と落ち着いた。

思い出して泣いたり笑ったり、そこにいないのに話しかけてみたり、明日会ったときのために挨拶の練習をしたり、つきあってもいないのに別れの場面を想定したり。。。そんな独り芝居っぷりが初めて顕著になった恋。キャピキャピだけじゃなくなった恋。

ヤンキーの和男(仮名)は私には一目ぼれだったらしいのだけど、「第一印象は見た目から」の私は彼を避けがちだった。(毒)
後でそれが一番の魅力みたいに感じることになったのだけど。^^

中2の時。私はどちらかといえば優等生。和男はたまにタバコの匂いをさせているようなヤンキー。だけど私に頭の上がらない彼。仲間のヤンキーまで私に会釈をしてすれ違う始末。

姐御かよ。わたしゃ・・・

そんな中、和男の頭の良さ、運動神経の良さ、人望の厚さ、笑った時のえくぼの深さ、私が冷たくした時の落ち込みっぷりに、心を動かされていった私。
気づけば手を振り挨拶する瞬間を心待ちにする毎日。学校に行く意味が変わる。

明日は何か話そう。私も好きだよって分かってもらえるような笑顔をしよう。
今日は会えなかったな。。。週末なんて嫌いだよぅ。。。

見慣れているはずの景色に和男が入り込めば、いつまで見ていても飽きないものに変わった。彼が頬杖をついて外を見ていたベランダの手すりが特別な色で光った。意味もなく放課後の教室に残っては、偶然の出遭いを待った。

2-3ヵ月後、私達は恋人同士になった。けれど。
嬉しすぎて、私は天邪鬼になった。

Kicoちゃん、これから8年間つきあって、22歳になったら結婚してくれる?

―8年間つきあってたらね。(冷

がっこ楽しいよね。俺Kicoちゃんに会うために来てるようなもんだよ。さぼってねーよ、しばらく。

―う~ん・・・私は家のほうが楽しいかなー。(冷

それでも和男は優しく笑って、すこし腰をずらして寄り添うようにして座るのだ。
悪女?
そうかも知れないけど、私は泣いていた。心の中で、そして現実にも。
どうやって好きを見せたらいいか分からなかった。あんなに素直に見せてくれているひとが隣にいながらも。

後になって別れてしまって、でも彼の笑顔は変わらなくて、高校に落ちた彼と推薦で合格した私は友達を続けた。
たまに暗い声で「光をくれ。手を差し伸べてくれ。」と電話してきた彼と近所の道端で話し込んだ。高校に行かないと世界が違うんだよ、友達が話してることについていけないんだよ、とそれでも笑顔で話す彼を、もう覚えていないけど他愛無い言葉で元気付けた。


私は、いままで好きになったヒトたちのことをよく思い出す。だけど、関係について、これほど後悔するヒトは彼意外に思いつかない。初めてだからとか、そんなことでは片付かない。私はもっと、彼をまっすぐに愛したかったのだ。まっすぐに愛せば、たどり着けたはずの場所を、この目で確認したかった。もっと違う形で、和男のえくぼを見たかったのだ。

探し出して連絡したら、きっとあの日々と同じ笑顔で再会してくれるに違いない。そしたら私は、勝手だけど、あの頃を穿り返して、ごめんねって言いたい。本当にちゃんと大好きだったよと伝えたい。


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