歯医者ぐらいでビクビクしてどないすんねんと、思い切りどやしつけたい気持ちになるが、やっぱり嫌だと、心の声が叫ぶ。午後5時ちょうど、歯医者の扉をゆっくり開けて、いざ、Go❗Go❗

 いつも名前を呼ばれるまで時間がかかる。その間に心の準備をするのだが、この日は、その暇もなく名前を呼ばれた。「はーい❗」と明るく元気に返事をする。明るく元気に返事をするのは昔からの変わらぬ私の特色だ。73歳5ヶ月になってもそれは変わらない。

 死刑台……もとい治療台に座る。「痛くしないでくださいね」と、お願いする間もなく顔に布を被せられる。もう一度言おうとしたが、「はい、お口を開けてください」と唐突に言われ、フガフガとしてうまく言葉に出せない。

 ガーッと鳴るあの治療音を私は好きではない。音を鳴らさずやってもらえないだろうか、なんて思っているうちに、悲鳴が上がる。誰の悲鳴だ? 恥ずかしい。私だった。

 歯医者VS私、しかし、呆気なく勝負はついた。KO❗ 完敗だ。今回も私の負け。ニヤリと笑って治療台を降りようとしたら、「まだですよ。これからですよ」と女医に引き止められる。ああ、二枚目(自己申告)はつらい……。


 歯医者は嫌いダァ❗ 治療が終わり、医院の外に出たところで叫ぼうとしたがやめた。恥ずかしい。73歳5ヶ月は羞じらいの年頃だ。声に出す勇気はない。腕と腰を振って動作で示す。……よく考えたらこちらの方がもっと恥ずかしかった。


 一杯飲んで帰ろうと思ったが、そんな気分ではない。梅田まで出て、焼きたてパンの店に入る。歯医者の後は焼きたてパン、お約束の習慣だ。クロワッサン一つとアイスコーヒー(524円)をいただく。夕刊を読む。日曜日の宝塚記念を研究する。だが、わからない。わからないけど、当たるような気がするから不思議だ。幸せな男前(自己申告)だなと自画自賛する。明日も仕事だ。頑張ろう❗