流星の間3 | 「えっ、ソフトバレー?」

流星の間3


kslakl;ka;



懐かしい顔が、次々とドアを開ける・・・



変わったようで、変わっていない。



10年という歳月は微妙で、絶妙だ・・・




しかし、当時一年間過ごしただけに、

会話の調子は10年ぶりでも色あせていない・・・




とりあえずのビールが空き、ワインに手をかけた頃から、

鈍いリズムで今宵とセッションが始まる・・・





アルコールが10年前の俺たちの肩を叩くのに、

さしたる時間は必要なかった・・・





しかしこの10年は、やっぱり10年だった。



会社を辞めた者。


会社を辞めて、この異業種交流会で知り合った仲間の会社に移籍した者。


会社が無くなってしまった者。


マラソンにハマっちゃって、毎朝5時から自主練習している者。




10年という時間は確実に皆の人生にその影を落とし、

各々の形の影をそのそれに、投影していた・・・








場がススムに従い、南米大陸特有の刹那的なラテン魂を垣間見せる

みんな・・・




そして、湧き上がる ある疑念。






『今夜の会場はイタメシ屋故、一杯目のビール以後はみなさんご機嫌に

カラフェの赤ワインを何本もおかわりしてますが、その酔いは普段

ビールしか飲んでない酔いの埒外にある酔いなのではないの?』


という疑念・・・




つまり、みんなビールの如く、赤ワイン飲み干してね?
















気がつくと、Tさんの会社の御用達のスナックにいた。


そこはママとマスターだけの、品の良いスナックだった・・・


結局メンバーのうち、一人帰っただけで、


10人あまりの男たちが狭いその店内で蠢いていた・・・






「うっ、旨い!」



不覚にも、そう漏れ叫びそうになった・・・



実はウイスキー、ブランデー、焼酎の類は好きなんだが、


それを水やお湯で割って飲む事が出来ないんですわ、僕。


いつもストレートなんですよ。



しかしながら、こういうスナックだと当然の如くのっけから、水割りですよウイスキーの・・・




まぁ、10人もの人間のオーダーをそれぞれ取るのもの


ママさん的にも邪魔臭いだろうと思って、


今回は、僕もそのウイスキーの水割りにそっと迎合した。




しかし、この水割りがクセ物だった・・・




とにかく今まで飲んだ事がないような、まあるい口当りに


北欧の新生児のやわ肌のような滑らかな広がりが押し寄せ、


意中の女性との初KISS、五秒前のようなドキドキ感が


飲んだ後の余韻として無尽蔵にフラッシュバックして来るのである・・・




そんな超高校級の快感に、飛沫を上げてダイヴしている自分に気がつくと、


同様に男達が、快感という暗い海へ次々とダイヴ・・・





そんな、みんなに 『ここだぜ!』 『ここにいるぜ!』


と言わんばかりに、開始されるカラオケ・・・




とにかくトップバッターを頼まれてもいないのに、バットいや


マイクを握るオレ・・・



GLAY の「春を愛する人」を名刺がわりに歌うと、


場は大音響とともに、ウェイクアップ。←意味不明



すると、一人別格のヒ-トアップぶりをみせている人がいるんすわ。


Mさん。



実はMさん、会社が投資ファンドの手に渡ってさ、


「あんた割りと使えるからさ、あんたが使えるスタッフ数人だけ

ピックアップしてよ。その他クビ切るから、それで事業を

一緒に立て直そうよ。」という提案を受けて、


「なんで、クビ切られとる部下や同僚が沢山おるのに、

のうのうとワシだけ残らないかんのや!」と、サラリーマン金太郎ばりの言葉を

放って、晴れて無職に。



で、残務処理や部下などの再就職の口利きに奔走して、

ちょっぴり疲れてたみたいで、飲み過ぎたMさん。

気がつけば、Mさんトイレから出てきません。



すると、ソコにいた 2週間ぐらい餌を食べていないカモシカのような

顔したマスターの顔に、瞬時に生気が宿るやいなや、抜群の機動力を発揮。



まず、トイレのドアを秘密の7つ道具で解除。


そして、倒れているMさんの顔色、様子、応答、等等あらゆる角度から

分析。


はじき出された答えは当然の如く


「119番! ママ!」



すると太めのママが、


インパラのように跳ね上がり、救急車をオファー・・・



救急隊員が入ってくると、緊迫感が土石流のようにボキに

押し寄せるんすわ。




で、ここからの事は、まず全国、いや全世界の救急隊員、医療関係の方々に

謝罪しときます。

もう二度としませんから。


を前提にお読み下さい。



するとさ、救急隊員二人に続いて、入り口でその様を見てる、

研修中らしき若い男女がいるのよ。


すると担架で運び出されていくMさんを見ると、


何故か、自分の中で、海猿よろしく、バディが

どエライ事になってる様に感じちゃって、


突然その研修中の男の隊員に、


「オレのバディが、オレのバディがーーーーっ!!!」と


絶叫しながら、ハグ。



そして、救急車に運ばれると一目散に乗り込む、オレ。


しかも、付き添いは一人しか乗れないのに、同様なイメージを

脳裏に浮かべた、残りの酔っ払いが全員乗り込もうとしてるんすわ。



そこを、一番ペーペーのボキが


「いいから、みんなは、いいからっ!」と、先輩面してたしなめ、


いざホスピタル。





しかし、道中も懲りずにその研修男に、


「ボキのバディが、バディーがーーーーーーーーーーーーーっ!」と


袖を引っ張ったりしてたが、


彼さ、はじめにハグした時から、病院につくまで、オレが


どんなにゆさぶりの言葉をかけても、メガネの下の目がまっすぐ

一点しか見てないのよ。ロボットかよ、お前は・・・

しかも一言も喋らないし・・・






で、到着すると、こっちは初めて救急車に乗ったもんだし、


テンションが見事に上がっちゃって、


ベットに横たわり、点滴を打たれるMさんを


「大丈夫ですか?大丈夫ですか?大丈夫ですかーーーーーーーー!」


と、ひとりドラマチックですよ。


来る看護師さん全てに、


「大丈夫なんスかーーーーーーーーーっ!!!!!」と、何度もクエスチョン。




するとMさんも、落ち着き眠りにつき、僕も、少し落ち着いてきたんすわ。



するとさ、時々Mさんのところへ様子を見に来る、看護師の若い女性の方に


気がつけば、恋の3秒前みたいな気持ちになってるんすわ・・・


で、Mさんの様子をみるとき、ちょうど彼女のヒップが、


オレ的ナイスビュー、を繰り広げるんすわ・・・ ワオゥドキドキ






するとどうでしょう。



なんだか、フワフワした気持ちになるのです。



気がつくと、車の代行運転の割引チケットの裏に、




MY E メール アドレスをしたためて、


ギフト・フォー・ユーしてるのです。


人って、時々信じられない行動をするんですね。




しかも、彼女100kg超級ぐらいの見事なバディ、いやボディなんすわ。




そして「彼とかいるの?」と、聞いてる僕。


「ハイ、います。」 2秒で返されてる僕。


そして、大人の余裕? という事なのでしょうか、


「人はさ、悩む生き物だからさ。ホラ、そんな時は遠慮せずにメール

すればいい・・・」などと、のたまっている僕。








その後、目覚めたMさんと逃げるように、病院を後にしました・・・







酔いも醒め始めた頃、この異業種交流会を主催していた、


N先生のアメリカからの帰りの飛行機の中で、言われた気がした

言葉を思い出していた・・・



『人に迷惑かけちゃだめだよ。』



10年の月日を越え、再度そう言われた気がした・・・











そしてその出来事の後から、ボキの携帯メールには、


タイトルが「SEXY GIRL!」とか、「YOUR BIG DICK!」とかのメールをはじめ、


「ドラック買わない? 安くしとくよ~ん。」みたいな内容だろう英文メールが

絶え間なく来ています。





多分、ボキのメアドがアメリカあたりで晒されてるんだと思います。




犯人はあのナースの彼女だと思います。


でも、悪いのはボキだから、何もいえません。




10年前アメリカに渡って、得た教訓。


10年後、そのアメリカからやって来るエロサイトメール・・・



流星が地に流れ落ちるほどの短い時間のようだった、


この10年。







そんな現実をしみじみと、噛み締める夜に、


また僕は恍惚とした表情で白ワインを飲み干すんです・・・







~流星の間~ 完