歓迎会という名の、サバト・・・
「カチャン」・・・・
最後のグラスを洗い終わった瞬間、
サウジアラビアの王様の誕生パーティーに出席した
中途半端な宝石商のような、
近年稀に見るやるせなさを感じながら、
その夜から朝にかけての出来事に感懐を抱いていた・・・
ざらついた砂塵を纏う己の幻想の肝(レバー)を牽くと、
熟女にあっという間に童貞を奪われた中学生のように、
その夜、歩んだ道程を振り返ってみる・・・
「人っていつもレモン色・・・」 この10文字の妙に潔いポエムが
30年後、伝説になる事を皆に宣言しよう・・・
それじゃ、述懐しようか・・・
全国津々浦々の電車の駅名に暁通している小学生のように
得意満面で、本日のディッシュを、
ドイツのインチキアクセサリー売りのように
卓上に並べる、嫁ハン・・・
今夜は練習終わりに、新加入したM夫妻の歓迎会をウチで
開催するってワケ・・・してるってワケ・・・
「ジャニュアスリィー」と聞こえたのは、生春巻きだった・・・
生春巻きという陳腐なメニューでさえ、「ジャニュアスリィー」と
聞こえせしめる黒潮海流のような、暖色の勢い。
つけダレが、ゴマだれと柚子ぽん酢だれという鮮やかな裏切りは
スゥィートチリソースに対する明確なレジスタンス・・・
鶏肉の煮込みにおいてはクローブの香りが完全に欠如しているのは
好き嫌いのあるハーブの香りを考慮しての、大人の温もりある分別・・・
もしくは、勇気ある未来への先駆者としての身勝手な義務感・・・
今夜の彼女は一目で分かる・・・・
ノッてる。
嫁ハンが作り上げた、
・生春巻き
・鶏肉の煮込み
・キッシュ
などをつまみながら、練習で乾いた喉を8人のチームメイトが
思い思いのドリンクで潤す・・・
実はM夫妻は、ウチのエースでもあるⅠの仕事仲間であり、
今年初旬、我が家で開催した、「牡蠣祭りだよ、全員集合!」に
何故かⅠが連れて来て、泥酔サマータイムブルースなオレが
「YOUって、身長いくら? 何かやってたのスポーツ?
うううん、ノンノン過去なんて鼻の下が長いカナダ女みたいに
気にしない、省みないっ! とにかくっ、練習に来なよっ! !」と
プリティスカウトしたワケなんスよ・・・
そうしたら、約一週間後の練習にほんとに現れて、
それが妙に楽しかったらしく、以後ドップリとハマってしまい
正式加入とあいなったわけ・・・
そんなM夫妻の旦那が、開始一時間あまりで、麦焼酎を
スポーツドリンクのように飲み干し、ダウン。
更に、血にまみれたゲロを吐くという、冬のスペシャルボーナス付きで。
急いでT奥さんの旦那(救急隊員)に電話で聞くと、
「ああ、○○やなぁ、大丈夫やで・・・」と言われ、皆一ミリも
気にすることなく、飲み会続行。
そして、既に練習の模様を映したビデオに飽きてきている
ウチの奥さんが、
「カラオケじゃ!」と、叫ぶとみんなが「カーラオケッ!カーラオケッ!」
と世界一バカっぽいトーンで大合唱開始!
スラムのちょっとした実力者になったような、まんざらでもない笑顔を
浮かべ、e-kara をセッティングする嫁ハン・・・
実はオレは前夜もT奥さんとトコでAM3:00まで飲んでおり、
この日は既に鈴木オネムちゃん(この言い回しカーワイイ)
になっていたので、皆にからすみのパスタを作り、
ひとり寝たのがAM1:00前。
そして、AM6:00過ぎに爆弾のように叩き起こされるオレ・・・
嫁ハン「ホラッ、起きなよっ! 大変だよ! 浜崎あゆみで絶対100点取るって
T奥さんに火がついちゃってるYO!」
そう、まだカラオケやってるんですよ、この生物達は・・・
ちょっとした研究機関だったら着目するよ、
この終わり知らずのバイタリティに・・・
聞くと、結局M夫妻はAM3:00過ぎに帰宅し、NがAM5:00くらいまで
カラオケを満喫し、最終的に残ったのが、嫁ハンとT奥さんと
エースⅠだった。
しかし、火がついてるのは、T奥さんだけじゃなく、
ウチの嫁ハンも、だった・・・
CDラジカセで、本歌をリスニングし、カラオケでトライアルという
地獄のような反復作業を延々と部活動のにように続けているのである。
しかも、起床したオレに向かって、
「コーヒー入れて~」とか、
「トースト焼いて~」とか
オレにとっちゃ、涙のリクエストを立て続けにオーダー。
コーヒースタンドの覇気の無い店員のようにテーブルまで
トーストとコーヒーを持っていくと、
「もう少し、焼いてくださいそのトーストを。」と、追加リクエストを
わがままアイドル恭子19歳のようにしてくる、T奥さん。
信じられますか? 皆さん・・・
この傍若無人っぷりを・・・
その性(さが)を伍代夏子あたりに情感たっぷりに唄いあげられ、
そのトーストを大いに喉に詰らせ、絶滅すればいいよこの女は・・・
そんな光景を目の当たりにしながら、膨大な洗い物を洗い、
最後の洗い物を洗い上げた時、眼前がレモン色に染まる
気がした・・・
ふとリビングにパーンしてみると、まだ「Voyage」で
なりふりかまわず、高得点を狙いにいってる嫁ハンがいた・・・
冬の朝に、身内のこういった酸味の効いた光景はこたえます・・・
「人っていつもレモン色・・・」
そんな事を思っていると、嫁ハンの後ろに薄黄色した後光が
射している気がした・・・
91点(本日の最高得点)を出していた。
嬉しそうな横顔がテーブル越しに、見えた。